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海底約20メートルで地酒を熟成

本紙掲載日:2023-09-15
1面

延岡・島野浦で実証実験スタート

◆〃世界初〃ピュアチタン製ボトル使用

 延岡の新たな特産品を生み出すプロジェクトが動き出した。延岡の地酒を、日向灘の海底に沈めて熟成させる「日向(ひむか)海底熟成酒プロジェクト」。まだ実証実験の段階だが、ゆくゆくは商品化も視野に入れており、企画・発案した森山工業(延岡市大武町)の森山和馬社長(52)は「今からワクワク、ドキドキです」と目を輝かせている。

◆まろやかな風味に

 海底熟成酒とは、日本酒や焼酎、ワインなどを瓶ごと海に沈めて熟成させる製造方法。温度が一定で、光が届きにくい海底に眠らせることで、酒に含まれるエキス分(糖分、アミノ酸など)量が変化、口当たりの良いまろやかな風味に仕上がるという。

 しかし、水中で割れ16日い瓶は、コンテナを使った大掛かりな固定が必要で、人件費がかさむなど課題もある。

 そこで、大の酒好きである森山社長は、自社の強みである「ピュアチタン」の溶接、加工技術に着目。延岡の地酒を、頑丈で、さびに強いピュアチタン製のボトルに移し替えて保存すれば「工都延岡の特製を生かした、これまでにない海底熟成酒を造れるのではないか」と考えた。

 ピュアチタンのボトルを使った海底熟成酒の製造は「日本初。恐らく世界でも初めて」。そのため「味がどう変化していくかは未知数」と言う。

 ピュアチタンは海底でも5年、10年と半永久的に保存しておくことができ、より熟成濃度の高い味にも期待できる。

◆2月引き上げ予定

 プロジェクトは、千徳酒造や県食品開発センターなどの全面協力で今年6月にスタート。8月24日には、延岡市島浦町の結城水産の養殖場一角に720ミリリットルの試作品ボトルを沈める実証実験も始まった。

 今回、沈めたのは千徳酒造のアルコール度数が高い原酒5種(純米大吟醸、純米吟醸、純米生原酒、純米原酒、四段原酒)と、佐藤焼酎の新作ウイスキー「延岡」、麦焼酎「天の刻印」、芋焼酎「のべおか城下町」。

 ひでじビールは、県産和栗を使ったハイアルコール・スタウト「栗黒」を瓶のまま沈めた。いずれも海底約20メートルで熟成させ、来年2月に引き上げる予定という。

 協働で開発を進める県食品開発センター応用微生物部の主任研究員、越智洋さん(46)は「今回の実験では、ガスクロマトグラフやアミノ酸分析計を使って、熟成後の成分量の変化もデータとして記録していきます。海底熟成酒はまだ全国的に研究が進んでいない分野。メカニズムの解明につながれば」と期待。

◆活気付ける起爆剤

 森山社長は「チタンもお酒も、延岡も、どれも自分にとって大切なもので、まさに点と点がつながったという気持ち。まずは半年後を楽しみに。地元延岡をもっと活気付ける起爆剤にしていきたいです」と話していた。

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