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LL サイズ
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1枚 1,200円
(ラミネート加工は300円追加) |
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高千穂町の土呂久地区で
◆11人がフィールドワーク
県が大学生を対象に毎年開いている環境教育プログラム「土呂久を学ぶフィールドワーク」が2、3日、高千穂町岩戸の土呂久地区であった。今年は宮崎公立大学の2年生から4年生11人が参加し、旧土呂久鉱山周辺で発生したヒ素公害(通称・土呂久公害)について理解を深めた。
土呂久公害は1920年、鉱山で製造が始まった亜ヒ酸に含まれるヒ素の影響で、炭鉱員や近隣住民に慢性ヒ素中毒症が多発した問題。閉山から9年後の71年、地区内の児童の健康状態がすぐれないことを懸念した教諭らの働きで明るみになり、73年に国の公害指定地域に認定された。
当時の県知事が患者と鉱山会社の間で補償を仲介するも、提示された「一部(皮膚のみ)の症状に対する補償」を不服とする患者らが宮崎地方裁判所へ提訴。全身の健康被害に対する関連性を認めるよう求めた。
裁判は75年の第1陣(患者23人)、84年の第2陣(同18人)を経て最高裁判所まで持ち越されたが、生きている間の解決を願う原告側の要請で90年、和解が成立した。
県によると、慢性ヒ素中毒症の認定者は3月に認定された県内在住の80代女性1人を含む216人で、存命者は41人、平均年齢は84歳となっている(今年9月末現在)。
フィールドワークは、問題提起から約半世紀がたち、関係者らの高齢化により懸念される歴史の風化を防ごうと2017年度スタート。ヒ素汚染問題の解決を目指すNPO法人アジア砒(ひ)素ネットワーク(横田漠理事長)に委託し、現地見学や講話、地元住民との交流などを行っている。
2日は土呂久公民館に集まり、佐藤元生館長(67)から土呂久の魅力や最盛期のにぎわい、現在は28戸約60人まで減ったという人口動向等に関する説明を聞いた。
その後、認定患者の佐藤アヤさん(故人)を叔母に持つ佐藤慎市さん(71)の案内で鉱山跡を見学。感じたことを書き留めたり、カメラやスマートフォンで撮影しながら見て回った。
宮崎公立大学はシステム工学の権威辻利則博士が学長を務め、ウェブマップ作成に優れたノウハウを有する。学生は今後、撮影した写真に説明文を加えるなどしたマップを作成し、土呂久の歴史や魅力を県内外へ発信する。
また、同日は、土呂久公害を描いた紙芝居「十連寺柿」や高千穂町の農村文化などを発信する藤木哲朗さん(日向時間舎)の講話も視聴した。翌3日は、主要坑道とされた大切坑内の見学やまとめ発表を行ったという。
教諭を目指す2年生の小川寛治さん(20)=東京都出身=は「昔の話だが、対岸の問題ではないと感じた。教員になったら今回の経験を子どもたちに語って聞かせたい」と話した。
土呂久地区は江戸後期から銀山として繁栄。明治以降にヒ素を含む鉱石「硫ヒ鉄鉱」が見つかり、1920年、同鉱石を焙焼(ばいしょう)して農薬や医薬品の原料となる亜ヒ酸を製造(亜ヒ焼き)するようになった。
33年までの人力による小規模経営から、スズを主産物として製造を拡大。
亜ヒ焼きの煙により水面下で環境汚染が進む中、地区内に映画館やテニスコートが造られるなど栄えた。その後、休山期間を挟み55年に操業を再開したが、翌58年に大切坑で出水事故が発生、62年に閉山となった。