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ヤングケアラーの〃声〃聞いて

本紙掲載日:2023-12-13
3面
ヤングケアラーの実態や課題について講演するカタリバの和田さん(左)と富永さん
ヤングケアラー支援地域力向上講演会(延岡市野口遵記念館)

知り、きづき、ささえる

◆子どものサインを気に掛けよう−延岡市で講演会

 延岡市主催の「ヤングケアラー支援地域力向上講演会」は11、12日に野口遵記念館であり、教育や福祉、介護、医療の関係者らが現状や課題、支援などについて情報や意識を共有した。

◆「見えにくい」という課題

 11日は、オンラインでのヤングケアラー伴走支援プログラムで実績のある認定NPO法人KATARiBA(カタリバ)から、当事者支援に当たっている和田果樹さんと保護者支援を担当する富永みずきさんが登壇。「『ヤングケアラー』って誰のこと?〜知り、きづき、ささえる」をテーマに話した。

 富永さんがカタリバの活動を紹介後、和田さんがヤングケアラーの定義などについて解説。就職後間もなく母親が難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、休職して2年半の介護生活を送った経験から、復帰後は当事者支援に力を入れるようになったと語った。

 ヤングケアラーの定義は、「本来は大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものこと」と説明。責任や負担の重さから、学業や友人関係などに影響が出てしまうケースが多いことを紹介した。

 当事者が行っている「ケア」には、家事や介護、送迎や付き添い、家計のためのアルバイトなど目に見えやすいものと、幼いきょうだいの見守りや、周囲に心配を掛けないように振る舞ったり、家族のために何かを諦めるといった目に見えにくい状態もあることを伝えた。

 本人が置かれている状況も、保護者が多忙だったり障害や精神疾患がある場合や、育児と介護のダブルケアなど多様だと説明。

 寝たりきりの母親をケアする中学生や、認知症の祖父を介護する高校生、ひとり親家庭で弟を世話する中学生など、カタリバで出会ってきた子どもたちの実態を報告した。

◆「自覚がない」「頼れない」も

 厚生労働省などの全国調査で「世話をしている家族がいる」と答えた子どもの割合は、小学6年生で6・5%、中学2年生で5・7%、高校2年生では全日制の4・1%、定時制の8・5%、通信制の11・0%に上ったという。

 県内でも小学6年生の3・8%、中学2年生の3・8%、高校2年生3・2%を占め、「クラスに1、2人くらいの割合」でいると報告。

 全国調査と比べ少ないが、「世話をしている」という表現は必ずしもヤングケアラーが担うケアのすべてを表しているわけではないとして、「実態としてはもう少し多い可能性もある」と指摘した。

 ヤングケアラーが生まれる背景には、少子高齢化や障害者手帳取得者などケアを必要とする人の増加と、世帯人数の減少や女性の社会進出に伴い家庭にかける時間が減少したことなど家庭内の支え手不足による、現代人の「役割過多」があると説明。その結果、「『ケア』を組み込んでこれなかった社会のしわ寄せ」に苦しんでいる子どもが増えていると強調した。

 ただ、実際には、一般的な手伝いとヤングケアラーを厳密に見分けることは難しく、自覚がなかったり、周囲に頼ることができない子どもが多いと紹介。

 周囲の人も家庭内のことは見えにくく、子ども本人や家族らが支援を受けることに消極的だと、関係機関につないだり支援する側も判断しづらいといった課題があることを報告した。

 その上で、まずは、日常的に家庭の買い物をしていたり、授業中に居眠りが多い、勉強についていけないなど、見過ごされがちな子どものサインを気にかけるようアドバイス。本人がヤングケアラーかどうかよりも、家族の病気や障害、離婚・再婚、出産など、生活や心に大きな影響を及ぼす家庭環境の変化を想像するよう促した。

 また、ヤングケアラーが置かれている状況は複雑なため、「いくつもの感情が同時に存在するのは自然なことで、本人がうまく言葉にするのは難しい」と当事者を代弁。解決を急がず丁寧に本人たちの声を聞き、決して家族のせいにせず丸ごと大切にしていく視点で接していくよう求めた。

 普段から子どもと関わる機会がある人に対しては、「目の前の子どもが大変な環境の中を頑張って生き抜いているのかもしれないということを想像し、考え続ける」「ケアを担っている子どもがいたら、承認しつつも困り事はないかという観点で捉える」「自身が感じた違和感を大事にし、周りと共有する」よう希望。

 あまり関わる機会がない人には、子ども食堂のボランティアなど「日常の中で子どもに関わる機会をつくってみる」、寄付などで「地域をはじめとした支援団体を支援する」よう呼び掛けた。

 12日はミニ講演会の後、ヤングケアラー支援の関係者を対象にしたグループワークを実施。ケースによってどのような対応が考えられるかなどを検討し合った。

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