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ココカラSDGs−第33回「先生教えて!イノベーション論」

本紙掲載日:2023-12-27
6面

◆教育は急いではいけません−谷田貝さん
◆ブーカ時代を生き抜くために−難波さん

 今注目のSDGs(エスディージーズ)をテーマに、地域や地球の未来を共に考えるFMのべおかの番組「ココカラSDGs」の第33回「先生教えて!イノベーション論」が、21日に放送された。内容を一部抜粋して紹介する。

 アドバイザーはSDGsコミュニケーターの難波裕扶子さん(51)=シンク・オブ・アザーズ代表、日向市亀崎西=。ゲストは宮崎大学地域資源創生学部教授の谷田貝(やたがい)孝さん(58)。なお、収録は4日に行われ、難波さんと谷田貝さんはリモート出演した。

▽提供:旭化成、グローバル・クリーン
□再放送□28日午後8時から


−−今回のテーマは「先生教えて!イノベーション論」です。

〈難波〉私たちが子どもの頃と比較して、今比べものにならないくらい劇的なスピードで社会が変化しています。また、将来の予測が極めて困難な時代「VUCA(ブーカ)時代」と言われており、このブーカ時代を生き抜くためにはイノベーションが必要だとも言われています。今回はイノベーションのメカニズムについて研究している谷田貝さんをゲストに、皆さんと一緒に考えていけたらと思います。

−−では谷田貝さん、自己紹介をお願いします。

〈谷田貝〉今から8年前、宮崎大学に地域資源創生学部という新しい学部ができ、そこでイノベーション論や組織論、社会の課題を解決するためのソーシャルデザインなどの講義を担当しています。
また、2020年に日向市で発足した「ひなたイノベーションセンター」にも参加させていただき、どうやってイノベーションを起こしたらいいのか、大学教員の立場から中小企業の皆さんに少しだけアドバイスをさせていただいています。

〈難波〉谷田貝さんとは、その「ひなたイノベーションセンター」を通じて知り合ったのですが、イノベーションの一つ、サンドイッチの話が印象に残っています。

〈谷田貝〉イノベーションという言葉は少し分かりにくく、日本では誤解されている部分があります。もともとは「新しいものを作り出す」ことを指しますが、日本で最初に紹介された時に「科学技術」と訳されてしまったことで、その概念が科学技術を新しく開発することだけに限定されてしまったようです。
実際にはもっと広い概念で、社会にある課題を新しい方法や新しい知恵で解決していく、それがイノベーションなのです。
アップル社のiPhoneも、もちろんイノベーションなのですが、もっと身近なものとして、私はサンドイッチの例を出します。
ずいぶん昔、サンドイッチ伯爵という方がいて、トランプゲームが大好きだったのですが、食事の時には、どうしてもナイフとフォークを持たなければならないので、大好きなトランプゲームができませんでした。
それを見ていた誰かが、サンドイッチ伯爵のために、パンの間にハムや卵を挟んで片手で食べられるようにしてあげました。片手で食事ができるということは、もう片手が空くので、その空いた片手でトランプゲームや別の仕事ができるようになったのです。ちょっとしたアイデアが新しい価値を生んだのです。

−−大学では、どのような研究に取り組まれているのですか。

〈谷田貝〉私は50歳の時から大学教員として働いています。もともとは経済学を勉強していましたが、経済学だけではいろいろな意味で限界があるため、経営学についても一から勉強し直しています。
その経営学の中でも、特に人間の態度や行動、心理が組織行動にどう影響するか、そのメカニズムを解明する「ポジティブ組織行動論」について研究しています。
イノベーションを起こす前提として、やはり心がネガティブだと力が発揮できません。イノベーションを起こすポジティブな気持ちを組織でどう醸成していくか。組織行動とイノベーションをセットにして研究しています。

〈難波〉大学教員として教壇に立つまで、長くサラリーマンとして働かれていたそうですね。

〈谷田貝〉私はバブルの絶頂期、1988年に大学を卒業し、当時メガバンクと言われていた第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行しました。
入行後3、4年くらいはバブルの絶頂期が続きましたが、その後バブルが崩壊し、銀行や経済の状況が一変してしまいました。企業が次々と倒産し、そこから不良債権の回収が銀行のメインの仕事になってしまいました。
2000年代に入り、金融と産業を一体再生するため、国が「産業再生機構」という公的な再生支援機関をつくり、私はそこに転職しました。

〈難波〉長く金融の世界にいらっしゃって、そこから大学での研究の道を選択されたのはなぜですか。

〈谷田貝〉経済学では市場競争に負けた場合、負けた人が悪いという大前提があります。バブル崩壊後も「倒産する会社が悪いよね」という風潮があったのですが、環境が激変する中、経営者がどんなに頑張っても思い通りにならず、多くの会社が苦しんだわけです。
その市場競争に負けてしまった企業が、どうやったら復活できるのか、その復活の可能性は本当にないのか、その問題を強く感じました。
つまり、環境が変化し、その変化に対応するためにはイノベーションが必要です。イノベーションの可能性を企業が追求できるようにするには、どうしたら良いのか。
この答えが私の経済学の中にはなくて、経営学について、イノベーションのメカニズムについて一から勉強する必要があると感じ、40代後半で大学院に通い、改めて50歳から大学教員として働きながら研究しているところです。

−−イノベーション教育について詳しく教えてください。

〈谷田貝〉大学で「企業家精神とイノベーション」という講義を行っています。実は昔、「企業家精神」は「起業家精神」と訳されていました。でもこれって狭い。新しく会社を興した人だけに限らず、日常生活の中にある新しい課題に新しい方法で解決していく、それだけでもうイノベーションですよね。
つまり、われわれが望むと望まざるとにかかわらず社会は変化していきます。その変化に伴って、これまで問題ではなかったものが問題になってくるとすると、常にわれわれはその問題の解決を迫られます。だから今、起こす業ではなく、企てる業に訳されているのです。
イノベーション教育では、イノベーションを起こすために何が必要かを探究していますが、心の持ち方にも注目が集まっています。単に頭を良くするだけではなく、どう気持ちの上で真正面から社会課題に向き合うか、こういうところが大事だと思っています。

−−学生には、どのような話をされているのですか。

〈谷田貝〉心理学者のキャロル・ドゥエックさんは成功心理学の分野を切り開き、「マインドセット」という書籍を書いています。書籍によると、人間の心の持ち方は大きく分けて2種類あります。一つは固定的マインドセット、もう一つは「しなやかマインドセット」です。
固定的マインドセットは人間の能力や資質、可能性は生まれながらに決まっていて、生涯変わらないと信じていること。一方で、しなやかマインドセットは人間の能力や資質、可能性は自分の努力で高められると信じていることです。
また、これらのマインドセットは失敗した時の捉え方が根本的に異なるそうです。固定的マインドセットの人は自分の能力は伸びないと信じているため、失敗した時点で復活できないと捉えがちになります。しなやかマインドセットの人は失敗したとしても、この時点の自分の能力では達成できなかったと捉え、トレーニングすれば達成できると信じています。
キャロル・ドゥエックさんはもともと、固定的マインドセットだったようです。しかし、研究する上で自身がしなやかマインドセットに変わり、研究者として大成したと書籍に書いています。
一度失敗して「自分はダメだ」と思い、自分の可能性にふたをしてしまうのはすごくもったいないことです。学生には、常に自分の可能性が開かれることを信じて努力してほしいと伝えています。

〈難波〉日本は良い国ですが、一度失敗すると復活しづらい社会環境だとよく耳にします。しなやかマインドセットを持って常に自分の可能性を開放できるような復活しやすい環境に整える流れが生まれたら、この世界が大きく変わっていくように感じます。

〈谷田貝〉社会の変化のスピードと人間の心の成長スピードには、ものすごく乖離(かいり)があります。社会の問題に対してはスピード感を持って対応しなければいけませんが、われわれのような教育する立場から言うと教育は急いではいけません。今の心理状態はある一定の時間を歩みながら存在するので、変わろうと思ってもすぐに変われるものではありません。
また、安易に「一歩踏み出しましょう」という声掛けはしない方が良いと思います。私はその代わり、学生には「半歩でもいいよ。4分の1歩でもいいよ」と声掛けをしています。もし一歩を踏み出して全く違う世界だったら戻れませんが、半歩や4分の1歩であれば片足にまだ重心が乗っかっている状態のため、引き返すことができます。つまり、自分のペースで調節でき、少しずつマインドセットと向き合うことができます。
マインドセットに理解を深めつつ、マインドセットを変えたいという強い気持ちを持つこと。さらに、それには時間がかかることを、本人も大人も社会も認識する必要があります。

−−日々の生活の中で、イノベーション教育として取り組めることを教えてください。

〈谷田貝〉人間は困難や失敗に直面した時、「どうして自分は駄目なんだろう」と無意識にネガティブワードを考えてしまいます。
実は、このことでネガティブサイクルがますます強化されてしまうのです。一方で、人間の脳は問いを与えられるとその問いに答えようと脳が働くと言われています。
このことから、困難や失敗に直面した時は否定文を考えるのではなく、ポジティブな肯定文に言い換えることが大事です。つまり、「どうしたら自分は○○ができるようになるんだろうか」などと変えると少しだけ気持ちが良くなります。また、その疑問文に対して人間が本来持っている問いに答えようとする力が自然に働きます。
皆さんが「どうしてできなかったんだろう」と思った時は紙に書いたり声に出したりして、「どうしたら次からできるようになるんだろう」とポジティブな疑問文を頭の中で唱えてほしいです。

〈難波〉子どもたちや大人への声掛けで意識することはありますか。

〈谷田貝〉ロサダの法則によると、人間はネガティブなことが一つに対して、ポジティブなことが三つないと幸せを感じないそうです。
皆さんは誰かに注意するときにサンドイッチにする話を知っていますか。まずは褒めて、注意して、最後にまた褒める。これも正しいとは思いますが、ネガティブが一つに対してポジティブが二つのため、ロサダの法則からすると注意された人はネガティブなショックが残ります。
われわれはできないことや弱点に着眼しがちです。しかし、ポジティブな側面に目を当て、どうやって良いところを伸ばしていくか、欠点や弱点をどのように補うのかが大事になります。そして、時間的に余裕を持って、どのようにポジティブなフィードバックを投げ掛けていくかを考えなければいけません。

−−最後に、皆さんに伝えたいことはありますか。

〈谷田貝〉「人間の脳は5歳くらいまでに形作られてその後は伸びない」「20歳までが脳の成長の限界だ」と科学的に否定されていたこともありました。しかし、最新の脳科学でそれは誤りで、人間の脳はいつまでも成長することが明らかになりました。
実は、脳を成長させるためにはポジティブなフィードバックが必要です。笑顔で自身や周りの人にポジティブなフィードバックをしてほしいです。

〈難波〉ポジティブに物事を捉えて自身や人に問い掛けることで、心の平和が生まれ、イノベーションが起こしやすい環境が整っていくと思いました。

□第34回の内容□
〈テーマ〉「誰一人取り残さない『SDGs未来都市・のべおか』の実現に向けて」
〈ゲスト〉延岡市長の読谷山洋司さん
〈放送日〉来年1月18日午後1時から
〈再放送〉来年1月25日午後8時から、28日午前11時からの2回

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