新型コロナ、影響じわり

宿泊キャンセル１万２千人超−県内

◆経済、物流各分野で損害

　県内主要宿泊施設で個人、団体合わせて１万２７６０人のキャンセルが発生するなど経済、物流の各分野で損害が出始めている。県は３日、新型コロナウイルスによる県内経済への影響をまとめた。河野知事は「経済、県民生活に大きな影響が出ている。十分に状況を把握しながら、終息後に国とも連携しながら万全の対策を打っていきたい。今は連携し我慢を」と訴えた。総合政策課が同日、２日現在の現状を対策本部会議で報告した。（３面に新型コロナウイルス影響の関連記事）

■商工観光分野

　宿泊客減、製造業のサプライチェーンの停滞などで、宿泊業、運輸業、建設業、飲食業、製造業、小売業など県内の幅広い業種で影響が出始めている。

　具体的には、寄港を中止したクルーズ船が、細島港２隻、油津港４隻。宿泊客は、県内主要宿泊施設５２のうち１８施設でキャンセルがあった。内訳は、個人旅行１８２５人、団体旅行３５１件の１万９３５人。

　県の中小企業特別相談窓口にあった相談は、運輸業が「中国などからの客足が遠のき売り上げが減少」。建設業が「中国からの資材が滞り、業績に影響。今後の資金繰りが厳しい」。飲食・宿泊業から「イベントの中止や会議の自粛で、キャンセルが多くなっている」など。

　また、中国の関連工場が操業停止の影響も懸念されている。企業局の渡川発電所発電設備一括更新工事は現時点で影響はないが、このまま物流が回復しなければ影響が出てくる。上祝子発電所ネットワークカメラ増設工事は、中国工場の操業停止で工期内の納品が困難な状況という。


■農林水産分野

　輸出では、中国への県産木材の出荷が延期されているほか、香港への花きなど農産物、養殖ブリなど水産物で２月から出荷の停止、延期となった。「香港への輸出は、昨年６月以降に本格化した政府への抗議活動との複合的な理由が考えられるが、今後も状況を注視する必要がある」

　小中学校の休校に伴う学校給食の影響も出てきた。

　米の使用量は２万３５７０キロ（年間使用料の約３・１％）減の見込みだが、低温庫で保存、野菜も納品済みのものは冷蔵保管などで対応するため、大きな影響はないという。

　ただ、今後の発注がキャンセルされる品目について、市場価格に影響を与える可能性もあり、調査を続ける。

　牛乳は学校への供給事業者で、納品休止による減収が見込まれる。

　卒業式などの行事、イベントが中止されると、式典などで使用される花きの需要減も心配されている。

　農泊旅行者にも影響があり、高千穂郷・椎葉山、延岡、西都、北きりしま、串間の５協議会事務局への聞き取り調査では、県内の主要４地域で、個人旅行が国内の６人、団体旅行は７件１５２人のキャンセル。国別では中国が２件６４人、台湾２件６９人、香港２件９人、国内１件１０人。


■公共交通機関

　貸し切りバスは、クルーズや企画旅行、合宿など学校関係のキャンセルが発生。高速バスは、福岡、熊本両県での感染者発生以降の数日間でキャンセルが出ている。路線バスへの影響を推測するのは難しいが、レジャー利用の路線で利用者減が想定されるという。

　ＪＲ九州（全体）は、２月鉄道取扱収入（速報値）が前年同時期比９・８％減で１４億円の減収。

　観光列車「海幸山幸」の予約キャンセルもあった。

　航空機は国内線の利用者減が予想されるほか、国外線でインバウンドを中心に利用者が減少。台湾、ソウル便が予約が低調な便などで欠航を決めている。

　フェリーは下り、上りともにキャンセルが発生。

　コンテナ航路は、中国航路（細島―上海）が２月１８日に休止、その後も寄港日の遅延が出ている。

　韓国航路（細島―釜山）は４航路のうち１航路が釜山港での貨物船渋滞、荷揚げができないなどの理由で２月中旬から細島港への寄港日の遅延が発生している。