新型コロナウイルスとは−（上）
本紙掲載日：2020-03-19
3面
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九州保健福祉大薬学部・佐藤圭創教授に聞く
◆感染を拡大させないために
世界中で新型コロナウイルス感染が拡大し、国内でも学校の休校やイベントの中止・延期が次々と決まるなど市民生活に影響が生じている。出口の見えない同ウイルス感染症の問題だが、感染を拡大させないために市民ができる行動は何か。医学博士で感染症などを専門とする九州保健福祉大学薬学部薬学科の佐藤圭創教授にウイルスについてや予防策などを聞いた。２回に分けて掲載する。
◆ＳＡＲＳに類似も全くの新型
――新型コロナウイルスとは、どのようなウイルスなのでしょうか。
強毒のＳＡＲＳ（サーズ、重症急性呼吸器症候群）、ＭＥＲＳ（マーズ、中東呼吸器症候群）というコロナウイルス感染症のウイルスと同等の新型です。昨年１１月ごろから、中国の武漢市を中心に出てきました。ＳＡＲＳウイルスに近いウイルスと考えられています。
ただし、ＳＡＲＳウイルスの抗体などは効かないので、類似はしていますが、人類が今までかかったことがなかった全く新しいウイルスと考えていいでしょう。
変異を起こしやすく、人から人に、あるいは人から動物に、動物から人に感染していくうちに毒性が強くなったり、弱くなったりする可能性があります。対応が非常に難しいウイルスであるといえます。
――世界的に感染拡大していますが、まだピークではないのでしょうか。
まだピークではありません。感染流行拡大期の手前です。状況的には韓国やイタリアもまだピークには達していません。日本は今、他の国と比べて感染者数の増え方が緩やかです。１日に何百人、何千人という単位の発症者は出ていませんので、日本は今のところ対策がうまくいっていると考えていいと思います。
大事なのは、症状がない人がうつしてしまう可能性を少しでも減らすことと、ピーク時の発症者を少なくし、時期を遅らせることです。ピーク時の発症者が多ければ多いほど医療崩壊が起こりやすくなります。ピークの時期が後になればなるほど、対処する準備ができます。なだらかでゆっくりとしたピークであれば１日に発症する患者数が少なくなり、対応する医療機関も分散することができます。
◆ウイルス外側のスパイク−せっけんとアルコールに溶ける
――新型コロナウイルス感染症対策専門家会議では、「症状の軽い人も、気づかないうちに、感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていると考えられる」と指摘しています。どうすれば感染（うつす、うつされる）を防げるのでしょうか。注意すべき点は。
新型コロナウイルスは、膜に角のようなスパイクを持つウイルスです。スパイクが細胞にくっつき、中に入っていきますが、スパイクが壊れてしまったら細胞の中に入ることはできません。
ウイルスの外側にある膜は、リン脂質でできています。このリン脂質とは、脂です。脂はせっけんとアルコールで溶けます。ウイルスは膜が壊れてしまうとスパイクがばらばらになってしまうので、このウイルス自体の感染性はなくなります。だから、せっけんとアルコールでの手洗い、手指消毒がとても有効です。
うがいも口腔（こうくう）内、鼻腔内をきれいにし、加湿する点で感染防止に役立ちます。普通の水道水でうがいをするのが一番いいと思います。
◆窓を開けて換気を−有効な次亜塩素酸
最も効果的なのが、窓を開けて換気をすることです。新型コロナウイルスは、ＳＡＲＳウイルスと同じく飛沫（ひまつ）感染で広がるウイルスです。結核やインフルエンザでも実証されているのですが、「希釈効果」といって、窓を開けると空気が入れ替わってウイルスが外に出ていき、外で拡散して死滅します。窓を開けることによって圧倒的に感染率が下がるというデータが出ています。
台所などで使う塩素系漂白剤を使った次亜塩素酸も有効です。５００�佞凌紊法▲撻奪肇椒肇襪離�ャップ１杯分の塩素系漂白剤を入れて混ぜれば出来上がりです。ペーパータオルでもいいですし、雑巾などに湿らせてしっかり拭き、その後しっかり水拭きすれば、ほとんどウイルスはいなくなります。厚労省も推奨しています。
きちんと防御していれば、新型コロナウイルスはコントロールができます。そのためにマスクをきちんと着けることです。マスクは自分を守るだけでなく、他の人にうつさないことにもなります。（つづく）
□プロフィル
佐藤圭創（さとう・けいぞう）熊本大学大学院医学研究科修了。同大学医学部第一内科助手、同大学薬学部薬物治療学准教授を経て、２００９年４月から現職。生化学、病理学、先端医療学などを担当。医学博士。専門は呼吸器内科、感染症科。日本内科学会、日本呼吸器学会、日本感染症学会などに所属。ＮＰＯ法人のべおか健寿ささえ愛隊隊長。５７歳。
◆２０〜２２日、佐藤教授の特別番組−ＦＭのべおか
ＦＭのべおかは２０〜２２日、感染症が専門で九州保健福祉大学の佐藤圭創教授の特別番組を放送する。新型コロナウイルスについての情報や予防法を中心に情報を発信する。
特別番組は、佐藤教授が隊長を務めるＮＰＯ法人のべおか健寿ささえ愛隊提供の番組「どんけん」の拡大版。時間は５５分間。放送日は２０日午後１時、２１日午前９時と午後４時、２２日午前１１時で、各回とも同じ内容。