本紙掲載日:2023-01-10
(8面)

地域の食・スペシャリストに学ぶ

日知屋東小−プロジェクト学習−日向

 日向市立日知屋東小学校(平田哲校長、517人)の5年生94人が昨年9月から、地域の食について継続的に学んでいる。さまざまな職種の地域の大人たちも関わる、キャリア教育の視点を踏まえたユニークな取り組みを紹介する。

 この取り組みは「日向の食について考えるプロジェクト」。同市キャリア教育支援センターのコーディネートで、子どもたち自身の調べ学習と並行してスタート。日向地域特産のヘベスや地元・細島港で水揚げされる魚などについてグループごとに調べながら、地域の大人たちを講師に、その学びを深めてきた。

 講師として参加したのは同市漁協、マルイチ(本社・同市江良町)、日向衛生公社(同市財光寺)などの関係者。

 このうち、県内にスーパーマーケット9店舗を展開するマルイチ会長の睫變縞紊気鵝複牽亜砲脇隠昂鄰羹棔各クラスで講話。日本の食糧自給率の低さを示し、にもかかわらず減らない食品ロスの問題を、子どもたちに分かりやすく問い掛けた。

 「肉も野菜も米もすべて生きており、私たちはその命を頂いている」とし、「頂いた命を大切にするため、学校でも家庭でも一人一人しっかり意識して取り組んでほしい」と伝えた。

 また、子どもたちから「食品ロスを減らすためにスーパーマーケットとして取り組んでいることは」と質問されると、▽できるだけ食材を余らせないよう、天候も見ながら売れる量をきちんと計算して仕入れる▽消費期限の近い物など早く売りたい物は割引して買ってもらうなどと答えた。

◇野菜の苗植えで命育む体験

 また、子どもたちは同9月下旬、その命をはぐくむ現場に足を運んだ。訪れたのは同市富高にあるマルイチの関連会社・日向百生会の農場。社長の黒木洋人さん(37)から教えてもらい、カボチャやネギの苗植えを体験した。

 ネギの苗を試しにかじってみた2組の林田悠生(はるき)さん(11)は「柔らかくておいしい」と笑顔。「こんなにちっちゃいネギが、これから大きくなってマルイチに並ぶと思うと驚く」と話した。

 安心安全な野菜を消費者に届けようと、日向百生会の農場は有機JAS認証を取得。マルイチ会長の睫擇気鵑盻気某日、草取りなどに汗を流す。

 「まだまだ収穫量は少ないが、それでも店頭に並べることで、虫が付いているから食べない、形が悪いから食べないという消費者の意識を少しずつ変えていきたい」と話す。

◇高校生と一緒に「究極の弁当」

 同11月中旬には、門川町の県立門川高校(村社貞利校長、258人)の総合学科生活科学系列3年生13人と一緒に、ここまでの学びを生かした「究極の弁当」作りに取り組んだ。

 「野菜を皮や芯まで丸ごと食べたい」「地元の魚を使いたい」など、子どもたちのリクエストに応じ、ピーマンを種まで丸ごと煮びたしにした「丸ごとピーマン」、ニベやマグロの南蛮漬け、大根やニンジンを皮まで使った切り干し大根の炒めものなど、高校生がメニューを考案した。

 子どもたちは、高校生から包丁の扱いなどを教わりながら楽しく調理。出来上がると、持参した弁当箱に詰めて味わった。

 1組の坂本碧澄(あすむ)さん(11)と黒木優雅さん(10)は「どれも心がこもっていておいしかった」と満足顔。ここまでの学びについて「地元で取れる物を大切に食べ、食品ロスを減らすことが、日本の食糧自給率を上げることにつながると感じた」といい、「家庭でもキャベツの芯を捨てずに料理に使ったり、買い物をする時は必要な分だけ手に取るようにしたりして工夫したい」(坂本さん)、「外食する時は食べられる量だけ注文するなど、できることから取り組みたい」(黒木さん)と感想。

 1組担任の小林麗子教諭(47)は「これだけ多くの地域のスペシャリストに関わってもらったことで、子どもたちは『日向の食ってすごいんだ』『日向にはこんなにすてきな大人がいるんだ』と感じることができた。自分たちの暮らしともつながり、学校では教えきれない深い部分に気付かせていただいた」と感謝する。

 子どもたちは今後、ここまでの学びを自分たちでまとめ、気付いたこと、感じたことを3学期に発表する計画という。


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