本紙掲載日:2023-02-16
(2面)

男性、女性関係なくもっと働きやすい職場に

延岡税務署、初の女性署長・小沢百々子さんに聞く

 昨年7月に着任した小沢百々子延岡税務署長(37)は、同署では初の女性署長。東京都出身で延岡市に住むのは初めてだが「実は推理小説が好きで、小学生の時に高千穂や延岡を舞台にした作品を読んだことがあり、延岡のことは存じ上げていました。職員には話していなかったんですけど…」と、照れくさそうに話す。前職は国税庁長官官房人事課課長補佐で、職員の働き方改革や女性活躍推進に携わった。「税務署にとってとても重要」という確定申告期間(16日〜3月15日)を前に、延岡市に実際に住んだ感想や税務行政で働く女性の環境などについて聞いた。


◆小説で出合った延岡−海、山、川あり「一つの国のよう」

 読んだ小説は内田康夫さんの「高千穂伝説殺人事件」。「殺人事件」ですから、ちょっとはばかられるのですが、とても面白い本です。宮崎全体や新田原も出てきます。内田さんはそれぞれの地域を綿密に取材し、風景が想像できるように描写される作家なので、延岡の土地柄については小学時代にインプットされていました。2018年に延岡税務署長を務めた出口達也は、私が入庁した時の上司なのですが、出口が署長として延岡に行くと聞いた時に記憶が呼び覚まされ、地理を確認したことを思い出します。

 実際に来てみて、延岡ってすごく面白いと思いました。県庁所在地からはそれなりに離れていて、大分、熊本からも距離があって、海も山も川もあって、このエリアだけで結構完結しているというか、ある意味一つの国のような。皆さん、県北(けんぽく)地域と呼ばれていますが、一つの文化圏がありますよね。

 初めて来た時に、低い山にもやがかかって、そこから光が入って来て…。幻想的な、いい風景でしたので、昔からさまざまな伝説があって、栄えてきて…ということが分かるなあと、感動しました。


◆増えた女性職員−男性社会のイメージ払拭

 2021年度の資料ですが、在籍している女性職員の割合は、財務省全体で24・1%、国税庁は24・2%で、ほぼ4分の1。国家公務員採用試験からの採用者に占める女性の割合は財務省全体で37・4%、国税庁36・9%で、第5次男女共同参画基本計画における目標値(35%)を達成しています。延岡署の中でも、今年は総務課長も女性ですし、統括官や若手職員の中にも女性が結構いらっしゃいます。税務署は男性社会というイメージは、データの上でも払拭(ふっしょく)されてきているのかなと思います。

 女性職員の育児休業取得率はほぼ100%です。職場復帰のためのサポートもしていますので、産休、育休後に辞めることなく、キャリアアップしていただける状況になっています。

 最近は男性にも子育てにしっかり関わっていただこうと、男性職員の育休取得にも力を入れており、2021年度のデータでは、国税庁の男性職員育休取得率は85・8%となっています。私たちも奥さまが妊娠したと聞くと育休取得を勧め、仕事を調整するなどして積極的にサポートしようと、職員全体で認識の共有を図っています。制度があるだけでなく、実際にそれを使って休める体制づくりをしており、国税は非常に働きやすい職場、キャリアを継続しやすい職場になっていると思います。


◆女性署長、熊本国税局管内で3人

 女性署長は現在、熊本国税局管内(九州)36署で3人います。近年は増えてきました。

 私が入庁した平成24(2012)年ごろには、女性の社会進出を促進する機運が既に高まっていましたので、女性だから苦労したというようなことはありませんでした。調査や現場の仕事がどれだけできるかということに、性別は関係ありませんから。

 ですが、平成の初めごろまでは、今のように保障も手厚くないですし、男性職員ばかりの中、子育てと両立して働き続けることは相当大変だったと思います。そのためお子さんができると辞めてしまう方も多く、署長までキャリアを積める女性はまれでした。

 あるのが当たり前の女性トイレが昔はなくて、男性用ばかりだったという話を聞きます。「女性が増えてきたから女性トイレを増やしてくれ」と要望したとか。今では信じられませんが。

 国税に限らず、どの職場も同じだと思いますが、男性社会の中、フルタイムで頑張って働いて、男性と同じような成果を出し、子育ても頑張って、という非常にバイタリティーのある女性たちが、こういうところから少しずつ声を上げていって、今のこの働きやすい職場をつくってくださったのだと感謝しています。

 私たちは下の世代のために、男女問わずもっと働きやすい職場にしていかなければ。制度をつくるだけでなく、それを使う意識の醸成、社会的な機運の醸成までしないと、女性の働きやすい職場、ひいては男性にとっても働きやすい職場は実現しないと思います。そういう職場を下の世代に提供することが、先達が苦労してつくられたものを頂いた、私たち世代の責務だと思っています。


◆確定申告・e−Tax推進に注力

 日本は、納税者お一人お一人が税額を計算し、自ら納めていただく、納税者の自主性を尊重した申告納税方式を取っています。

 単純な計算ミスをなくすとともに、お金を支払うという、いわばネガティブな部分を、利便性を上げることで軽減しようと推進しているのが「e−Tax」です。

 国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーで、画面の案内に沿って入力していただければ、申告書が作成されて、送信までできるようになっています。

 マイナンバーカードと、マイナンバーカード読み取り対応のスマホをお持ちの方は、スマホでの申告が非常に便利になっています。スマホのカメラで源泉徴収票を読みとっていただくと反映され、申告書が簡単に作成されるようになっていますので、ぜひご利用ください。

 以前は本人認証の手続きがやや面倒だったのですが、セキュリティーを担保した上で、年々進化しています。以前、断念した方も、ぜひもう一度チャレンジしてみてください。

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