本紙掲載日:2023-02-23
(4面)

2年続けて最高益を更新

ウィズコロナを見据えた経営戦略に取り組む旅館「神仙」の佐藤社長
佐藤女将(右奥)のおもてなし指導。戸の開き方を教わる従業員
佐藤社長自ら外観の美化作業に取り組む

創業50周年・高千穂町の旅館神仙

◆ウィズコロナ見据えた経営戦略で

 総務省はこのほど、昨年11月分のサービス産業動向調査速報を公表した。このうち、宿泊業などを含む「宿泊業、飲食サービス業」の売上高は2兆3065億円(前年同月比10%増)で8カ月連続の増加。一方で、新型コロナウイルス感染症が流行する直前の2019年同月からは18・5%減少する結果となり、いまだコロナ禍が尾を引いているのが実情だ。

 業界が逆風にさらされる中、県内有数の観光地・高千穂町の三田井に門を構え、今年で創業50周年を迎える老舗旅館「神仙」(佐藤功宏社長)はウィズコロナを見据えた〃攻めの経営戦略〃を展開。従業員の満足度やサービスの質を高め、客単価を上げることで2年連続の最高益を更新した。

 今年度の月商も前年度以上と好調を維持しており、佐藤社長(70)は「高千穂鉄道の廃線や熊本地震が起きた際の教訓が生かされたと感じています。状況の好転をただ待つのではなく爪を研ぐ期間だと。外観、内装、食材、サービスなどあらゆるグレードアップに努めてきました。昨年度の売上高はコロナ禍前に比べて約20%増加、今年度は約50%の増加を見込んでいます」と話す。

◇3年連続の賃上げを実施

 従業員の満足度を上げる取り組みとして、今年度高卒社員の初任給を約18%増やすなど3年連続となる賃上げを実施。約3カ月で接客を磨く育成システムを確立した。佐藤久美女将(49)が立ち居振る舞いなどを教えるおもてなし指導、新入社員1人を先輩社員が持ち回りで担当する「シスター制度」の導入、部門の垣根を無くすことで情報共有の徹底を促し、相談しやすい職場環境づくりなどに取り組んでいる。

 入社1年目の西田優希さん(19)=延岡市北浦町出身=は「それぞれの先輩に『すごい』と思える接客法があり、その良さを間近で学べるのでとても勉強になります」。インターンシップで入社して約半年という鍾舒凡さん(21)=台湾出身=は「言葉遣いに苦労することもありますが、皆さん優しく、お客さまも性格が違う方ばかりなのでやりがいを感じます」と笑顔。指導を受ける様子からも、和やかで良好な関係性が伺える。

 慢性的な人材不足が叫ばれる宿泊業界だが、佐藤女将によると、神仙では従業員の満足度に伴うサービス品質の向上が売り上げにつながり、人材確保にも好循環を生んでいる。今年度は従業員寮を増築し、大学、高校新卒者数名と外国人材を新規採用予定。接客を受け持つ従業員の平均年齢は20代と先行きも明るい。

 佐藤社長は今後、パート従業員も含めさらなる待遇改善やビジネスの多角化に乗り出すとしており「私たちの取り組みが宿泊業や宿泊業を志す若者にとって励みとなり、高千穂町の活性化につながればうれしいです」と話していた。

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