本紙掲載日:2023-02-23
(6面)

ココカラSDGs−第23回「2030年まであと半分」

懐疑的な考えも当然、手を取り合わなければ−難波さん

 今注目のSDGs(エスディージーズ)をテーマに、地域や地球の未来を共に考えるFMのべおかの番組「ココカラSDGs」の第23回「2030年まであと半分」が、16日に放送された。内容を一部抜粋して紹介する。

 出演はSDGsコミュニケーターの難波裕扶子さん(50)=シンク・オブ・アザーズ代表、日向市亀崎西=。収録は6日に行われた。

−−今回のテーマは「2030年まであと半分」です。

〈難波〉2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsですが、達成を目指している30年まで、今年3月でやっと半分(残り7年6カ月)となります。今回はこれまでを振り返りながら、これからの取り組みについてお話したいと思います。

−−ところで難波さん、一緒に登場した、そのカエルさんについてご紹介していただけますか。

〈難波〉はい。こちらはサスティナビリティーアンバサダーのナンシー(Nancy)です。山の中で出会いました。「人間ってSDGsって言っているけど全然良くなってないじゃん」と、すごく怒っていたのです。
というのも、世界中でナンシーの友だちがいっぱい死んでいるそうです。「みんなのおうちなのに、なんでみんなで仲良く暮らせないんだろう」って。
それで私が「そんなことないよ。今みんな一生懸命に頑張っているところなんだよ」と分かってもらうために今、連れ回しているところです。
ナンシーのように、SDGsに取り組む中で何となく疑問を感じている人はたくさんいて、私もその一人です。そして今、そんな声を上げにくい雰囲気がすごく漂っている気がします。
「SDGsって言っているけど、ちょっと違うんじゃないの」。そういう声を誹謗(ひぼう)中傷と捉えるのではなく、敬意を表し、ちゃんと受け止めるべきだと私は思っていて、そこをナンシーが拾って広げてくれたらいいなと思っています。ですので、ナンシーはすごく毒を吐きます。

−−ナンシーは、これまでの話を聞いてどう感じましたか。

〈ナンシー〉難しいことを言っているラ。でも、何かすごいラ。

〈難波〉ナンシーは語尾に「ラ」を付けて話します。山でもラララと歌っていました。きつくて嫌なことがあっても、ラララと歌うと気持ちが晴れやかになります。

−−最近、ヤングケアラーの問題が気になります。厚生労働省は昨年4月、ヤングケアラー(家族の世話を日常的に担う子ども)の調査結果を発表。小学6年生の15人に1人、大学3年生の16人に1人が該当することが分かりました。

〈難波〉やっとヤングケアラーの存在が顕在化しましたが、まだ調査段階で具体的なことには踏み込めていない状況です。誰にも頼ることができない子どもたちの声に気付ける社会、子どもたちが自分らしく生きられる社会にしなければいけません。SDGsを唱える上で、これは大事なことですし、みんなで考えていくことも非常に大事です。
ヤングケアラーとは別に、女性の出産が高齢化しつつあります。その弊害の一つが、子どもに手が掛かる時期と親の介護の時期が重なり、負担が大きくなることです。
中には、核家族化で誰にも助けを求めずに一人で抱え込んでしまう人もいます。これは女性だけではなく男性も同じ場面に直面する可能性があります。誰もが「助けて」と言える社会、これらの負担を支える社会が必要なのです。
「人に迷惑を掛けてはいけませんよ」と子どもの時から言われ続けてきた日本人は、自己責任という言葉に縛られて他人に迷惑を掛けないようにしています。私は迷惑は掛け合うもの、お互いさまだと思っています。

−−宮崎県は昨年9月から今年1月にかけて小学6年生、中学2年生、高校2年生を対象にヤングケアラーに関する初の実態調査を行いました。子どもたちが世話をしている相手は、いずれも「きょうだい」が最も多かったそうです。

〈難波〉私の親は自営業で忙しく、5歳上の姉が私の世話をしてくれました。姉は私の世話があったため、何もできなかったそうです。昔は地域の方々が声掛けをしていたと思いますが、今はそれさえもなくなり、よりひどい状況になっているのだと思います。
声掛けは相手に寄り添い「助けて」と言える環境に整えることになります。声を掛け合うことが当たり前になればいいなと思います。

−−SDGsの取り組みについて、今どう感じていますか。

〈難波〉SDGsは広く認知されるようになりました。私がSDGsを啓発し始めた2017年ごろの国内の調査結果では、認知率は14・8%でした。
しかし、とある新聞社が2021年に実施した5000人対象の調査によると、76・3%の人が「聞いたことがある」と回答しました。この他の調査結果も80%前後でした。メディアや学校などで知る機会が増えたからだと思います。
しかし、中にはSDGsのアイコンや言葉は知っているが、内容は分からないという人もいます。なぜ取り組まなければいけないのか、どのような可能性があるのかというところまで踏み込めていないのが現状です。
また、SDGsに対して懐疑的な考えを持つ人がいることも当然です。「きれいごとばかり並べている」「SDGsホイールバッジを付けている人は何となく信頼できない」と話す人もいます。広く認知されている中で賛否両論あります。
SDGsの17の目標はすべての根っこがつながっています。そのため、自分が興味関心のあるところから取り組むことで、何かの解決につながる可能性や次の解決につながる可能性があります。
すべてをつなげて考えることが大事になります。想像して創造しなければ、よりよい未来へ変革していきません。

−−今後着目していきたい動きはありますか。

〈難波〉延岡市は昨年、「延岡市ゼロカーボンシティ宣言」を表明しました。その上、昨年11月1日には環境省の「脱炭素先行地域」に選ばれました。
世界では、異常気象や地球温暖化の要因の一つとされる二酸化炭素などを含む温室効果ガスを減らすことが大きな流れになっています。
しかし、経済活動をしていく上で二酸化炭素を出さないのは非常に難しいことです。そのため、発生した二酸化炭素を吸収してプラマイゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて動き出しています。
全世界がカーボンニュートラルに取り組む中で、日本は早めに脱炭素のドミノを起こそうとしています。
そのために2025年度までに国内に最低でも100カ所の拠点を作り、その拠点に国の予算を入れることで脱炭素ができるような地域を広げようと取り組んでいます。
その「脱炭素先行地域」の拠点に延岡市が選定されました。すごいことなのです。

−−最後に一言お願いします。

〈難波〉今の課題は気候変動や戦争です。
「いくらSDGsに取り組んでも、爆弾が一つ落ちればすべてがだめになる」「意味ないじゃないか」と言われます。だったら、私たちは何もしなくていいのか。
人間は考えることができる、協力し合うことができます。前進して少しでも課題に近づくしかないのです。
今を生きるためには、みんなが手を取り合わなければいけません。2030年まであと半分です。皆さんと一緒に取り組んでいけたらと思います。
(おわり)


◇提供:旭化成、グローバル・クリーン
□再放送□23日(23日)午後8時、26日午前11時からの2回


□第24回の内容□
〈テーマ〉「あなたのランドセルの色は何色?」
〈ゲスト〉グローバル・クリーン(日向市)専務の税田倫子さん、宮崎大学清花アテナ男女共同参画推進室副室長の清水鈴代さん

〈放送日〉3月16日午後1時から

〈再放送〉3月23日午後8時から、同26日午前11時からの2回

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