本紙掲載日:2023-03-06
(8面)

口腔がん−まずは自己検診で予防を

県立延岡病院県民健康講座−山本医師が講話

 県立延岡病院の県民健康講座はこのほど、延岡市新小路の同病院であり、歯科口腔(こうくう)外科部長の山本哲彰医師が「これだけはおさえておきたい口腔癌(がん)のこと」をテーマに話した。

 山本医師は、口腔がんが肺がんや胃がんなどと比べればずっと発見しやすいにもかかわらず、一般的にあまり知識がないため、進行するまで放置されやすいと指摘。

 初期であれば簡単に治せて後遺症もほとんど残らないが、進行すると顔が変形したり、切除手術で舌や顎の骨がなくなったりするため、食事や会話に著しい障害が生じ、最悪の場合は命を落とすこともあると説明した。

 部位別では希少がんで、死亡者数もほかのがんに比べ少ないが、過去55年で男性の死亡例は約7倍、女性も約4倍増加。口腔がんだけで見ると舌がんが約6割と最多で、特に舌の両脇に発生しやすく、先端や中央部分にできることは少ないと話した。

 口腔がんの原因は明らかにはなっていないが、飲酒・喫煙などの化学的な慢性刺激や、歯並びの悪さ、入れ歯や差し歯が合わずにいつも同じ場所に当たったり、かんでしまったりといった機械的な刺激が繰り返されることが誘因になると考えられているという。

 初期段階では自覚症状がなく、進行すると舌に硬いしこりやただれ、違和感やしびれ、舌の粘膜に赤い斑点(紅板症)や白い斑点(白板症)が発現。特に口内炎が同じ箇所に2週間続けてあって治らない場合は要注意で、「安易にステロイド入りの塗り薬を使わない方がいい」とアドバイスした。

 予防として月に1度は自己検診することを勧め、唇や舌、歯肉の裏側やほっぺの内側、「あー」と声を出して喉の奥も観察するよう指導。舌は口から出して変色や治りづらい傷などがないか確認し、首や下顎の左右に硬いしこりがないかも触って調べるようイラストを示して解説した。

 口腔がんは専門の医療機関であれば診断しやすく、治療としては切除が主流だが、化学療法や放射線療法などもあると紹介。進行すると、切除した舌や下顎骨の再建手術、術後の機能回復治療などが必要になると説明した。

 その上で、治療を受ける医療機関は宮崎市や大分、熊本県のほか、福岡県や都内など幅広く紹介できると報告。治療後は定期的な経過観察が重要だとして、県外で治療しても県立延岡病院で対応できると話した。

 山本医師は最後に改めて口腔がんの1次予防は「生活習慣・口腔内環境を整える」、早期発見・治療として2次予防で「月に1度は自己検診と年に1度は口腔がん検診」、重症化予防と再発予防の3次予防では「専門の機関で治療を受け術後も定期的に経過観察」するよう呼び掛けた。

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