本紙掲載日:2023-03-17
(7面)

mimozaでの最後の演奏会

演奏後に花束を受け、笑顔の岩田さん(11日)

ピアニスト、岩田典子さん

 難聴を乗り越え演奏活動を続けているピアニスト岩田典子さん(65)=延岡市愛宕町在住=の「心澄ませばコンサート・ファイナル」は4、5、11、12日、自宅を兼ねるアートホールmimozaであった。

 年内に自宅を売却して、関東に住む子どもの近くに転居予定のため、同ホールでの演奏会は最後。各日とも満席となり、岩田さんが真摯(しんし)に取り組んできた音楽に耳を傾けた。

 プログラムは、シューマンの「子供の情景作品15」(全13曲)をメインに、ピアノパラ日本代表選考会で弾いて「聴衆賞」を受賞した「夕焼け小焼けのバリエーション」(石黒りか作曲)、ドビュッシー、ショパン、ピアソラ。岩田さんは、曲の解説やこれまでの経緯、今後についての話を挟みながら演奏した。

 ピアノは、鍵盤が沈んで音が鳴るまで1センチ。しかし、打鍵が弱すぎると鳴らない。岩田さんはレッスンに通い、恩師の耳を借りて確認しながら、その1センチをどんなふうに沈ませればどんな音が鳴るのかを、少しずつ獲得していった。

 今回の曲目の一つ、ショパンのエチュード「エオリアンハープ」は、徐々に聞こえなくなり始めた時に弾いていた曲という。「当時は自分に聞こえるように弾いていたので、すごく音が大きかったかもしれません」。不安になり、全く弾けなくなった時期もあった−と、改めて振り返った。

 練習に練習を重ねた「エオリアンハープ」は今、繊細で軽やか。笑顔で弾き終え、客席を向いて立ち上がった岩田さんを、満面の笑みと拍手が迎えた。

 ホールの名前にしたほど大好きという庭のミモザは、例年なら咲き終わっている頃というが、今年はコンサートに合わせたかのように満開となり、窓の外で風に揺れていた。

 所有するグランドピアノ2台のうち1台は転居先に持っていくが、1台は同市東浜砂町の「Artspaceカイロス」(小島康男代表)に置かせてもらうことになったという。転居後も宮崎市にレッスンに通い、演奏活動を続ける予定。岩田さんは「皆さんに披露することが勉強になるので続けたい。再来年にでも延岡でコンサートができればうれしい」と話していた。

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 岩田さんは、同市の一ケ岡コミュニティセンターを拠点に活動する幼老交流型子ども食堂「ととろ食堂」を数年前から支援しており、今回も会場に募金箱を設置。来場者から寄せられた計7万3317円を同食堂に届けた。

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