本紙掲載日:2023-03-24
(3面)

脱炭素へ−のべおか林業シンポジウム

持続可能な林業、役割を学ぶ

 延岡市の「のべおか林業シンポジウム」はこのほど、同市東本小路の野口遵記念館であった。林業や製造業関係者ら約180人が参加し、脱炭素社会につながる森林の役割や持続可能な林業などについて学んだ。

 会場では、林野庁森林整備部森林利用課の川村竜哉課長が講演し、温室効果ガスの削減・吸収量を国が認証して売買対象とする「J―クレジット制度」を解説。現在は「森林経営活動・植林活動による二酸化炭素『吸収』」「木質バイオマスによる化石燃料代替等を通じた二酸化炭素『排出削減』」が、森林由来の認証クレジット方法論として確立されていることを挙げた。

 全体の方法論別内訳では、太陽光発電が50%超を占め、木質バイオマスが14・7%と続く(2023年1月末現在)。川村さんは現時点で1・8%にとどまる森林経営活動の数値を上げるため、「いかに森林組合が小規模事業者をまとめ、クレジット認証されるプロジェクトの登録を行えるかどうかが鍵になる」とした。

 同制度は昨年8月、制度運営委員会による見直しで、森林経営のプロジェクト認証対象期間が最大8年から16年に延長できる措置を導入。また、主伐後の再造林において成長した森林が吸収・固定する二酸化炭素の見込み分を伐採による排出量から控除できるようになったほか、伐採後に建築等で活用された木材が固定する炭素量の一部をクレジット算定対象に追加するなど、森林由来クレジットの創出拡大が図られている。

 川村さんは、国土や生物多様性の保全、水源の涵養(かんよう)、地球温暖化の防止といった森林が持つ多面的機能を挙げながら、これらの持続化や2050年カーボンニュートラル実現に向けて「間伐や主伐後の再造林」「炭素の吸収量が最も多いとされる若い人工林(林齢20〜30年)の育成」「民間による森づくり活動の見える化」「森林由来クレジットの取引の活性化」などの重要性を強調。参加者に林野庁が重点的に取り組んでいる森林による吸収量の確保・強化、木材による炭素貯蔵の拡大への理解を求めた。

 講演後にはパネルディスカッションもあり、川村さんや読谷山洋司延岡市長、住友林業資源環境事業本部脱炭素事業部の岡田広行マネジャー、全国素材生産業協同組合連合会の日眈〇囲魂馗后延岡地区森林組合の工藤良長代表理事組合長が、「脱炭素社会づくりに向けた森林の役割と地域への貢献」について意見を交わした。

 読谷山市長は、会場となった野口遵記念館にヒノキなどの市産材が活用されていることに触れて「(同館は)脱炭素やSDGs(持続可能な開発目標)の発信の場にもなる。市としてもこれらに貢献していく」と話した。

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