本紙掲載日:2023-05-09
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ペットと一緒に避難円滑に

協定書を手にする読谷山市長とペット災害危機管理士の酒井慈子さん(写真中央)ら(延岡市役所講堂)

災害時・理解と啓発へ今後さらに充実

◆延岡市が専門の2者と協定

 延岡市はこのほど、全日本動物専門教育協会(本部・東京、大橋教正理事長)とペット災害危機管理士会(同、鈴木清隆理事長)との3者で「災害時におけるペット飼育者の同行避難支援等に関する協定」を結んだ。

 近年はペットも家族の一員という考え方が社会に浸透し、緊急時には飼い犬などを連れて避難する人が増加。一方、指定避難所などは不特定多数の市民が身を寄せるため、中には動物が苦手な人や迷惑がる人もいて全国的にトラブルが絶えない。

 延岡市も昨年までに指定緊急避難所(洪水時)75カ所のうち55カ所にペット避難スペースを確保し、今後さらに充実させる考え。このため、協定では円滑なペット同行避難を実現できるよう、専門家の支援で災害時だけではなく平時から理解の普及・啓発、協力者の育成などを含めた、ペットと飼い主の安全や心の健康の確保に努めることを申し合わせた。

 動物専門教育協は動物愛護法の下、都道府県認可動物取扱責任者要件を満たすトリマーや家庭犬訓練士、動物臨床助士などの資格を発行しており、ペット災害危機管理士も育成。同士会はそれらの専門人材や行政などと連携し、避難所運営の負担軽減や放浪犬猫の環境問題対策、災害に強いペットとの共生社会づくりに向けて活動している。

 締結式は市役所講堂であり、読谷山洋司市長は総理大臣自ら国民に避難を呼び掛けた2020年9月の台風10号でペット同行避難の課題が顕在化して、市も受け入れ態勢を拡大した経緯を説明。その上で、「互いにおもんばかり合う、正しい認識を持ち合うのはこれからというところ」だとして、協力を求めた。

 大橋理事長は「今後もいろいろな災害が起きると思うが、できる限りわれわれも迅速に対応したい」。鈴木理事長は「行政による公助は限りがあるので、まずは一番基本となる自助のペット災害危機管理士4級を広めていきたい」と力を込めた。

 大橋理事長によると、延岡市内には同管理士の資格者が8人おり、式には市内で唯一、指導的役割の1級資格を持つ酒井慈子(あつこ)さん(大貫町、ペットサロン代表)も同席。酒井さんは、20年の台風では自店のペットホテルに依頼が殺到して断らざるを得なかったが、昨年は多くのペットが避難所で過ごすことができたとして喜んだ。

 その上で、「まだ避難所に連れて行けないと思っている方は多いので、理解がさらに広まれば」と期待。ただし、「ペット同行はまずは在宅避難の自助が基本」だとして、「講習などを通じて飼い主の方を支援していきたい」と話している。

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