本紙掲載日:2023-05-13
(2面)

新型コロナ週刊トピック−5類移行これからの備え

新型コロナの今後の流行予想(佐藤圭創医師作成)
今後の感染拡大に備えた備えのポイント(佐藤圭創医師作成)

佐藤圭創医師に聞く

 新型コロナウイルスの新規感染者数は県内を含め全国的に微増傾向が続いています。大型連休を通じた感染の拡大が懸念されていますが、新型コロナの感染症法上の分類が「5類」へ移行したのに伴い検査体制が大幅に縮小し、毎日の感染状況発表が終了したことで、今後は実態把握がより難しくなります。

 そこで今回は、県新型コロナ対策調整本部で特任医師を務めた佐藤圭創医師(延岡市新型コロナ対策アドバイザー)に、これから備えておくべき点を中心に話を伺います。

◆XBB系統拡大予想されるが、公表終了

 1人から何人に感染しているかの指標となる実効再生産数は全国で6週連続、県内も3週連続で「1」を超え、感染者数の微増傾向が続いています。延岡市内は1週間当たりの感染者数が4週続けて20人台で推移し、実効再生産数は9日現在で1・0と小康状態です。

 一方、県内のゲノム解析では、世界的に流行しているオミクロン株亜種のXBB系統ウイルスの割合が直近(4月28日実施分)で全検体の52%を占めており、明らかにBA・5からの置き換わりが進んでいます。

 外国人旅行客の急速な回復と比例する形で都市部ではすでにXBB系統が感染の主流となっていて、さらなる拡大が予想されますが、こうした検査分析の情報も今後は公表されません。

◇ワクチンの有効性や安全性に変わりなし

 感染拡大の第8波まで対策の〃切り札〃とされていたのがワクチン接種ですが、WHO(世界保健機関)は「60歳未満の健康な成人にはこれ以上の追加接種を推奨しない」と表明しました。

 決してワクチンの有効性や安全性に対する考えが変わったわけではないのですが、世の中には誤った情報も出回っており、医療態勢が脆弱(ぜいじゃく)な県内の関係者はワクチン離れを懸念しています。

 佐藤医師によると、ワクチン接種から4カ月が経過すると免疫は感染を防げないレベルまで低下するといいます。5類移行に伴い開始した2023年度(春)ワクチン接種は高齢者などが対象で、多くの人は秋まで接種できません。

 国内では感染力が強いとされるXBB系統のウイルスへの置き換わりが進んでいるため、今後も感染が広まる可能性は十分にあります。

 BA・5と同様に、多くの人は感染しても無症状や軽症だとされていますが、高齢者や基礎疾患がある人などは感染すると重症化しやすいことに変わりはなく、自治体や医療機関はこれらの人たちを優先して8月末までの期間に、できる限りワクチンを接種してもらうよう訴えています。

◇感染した人ほど追加接種は有効

 これまで新型コロナに感染したことがある人からは「免疫ができたのでワクチンを打つ必要はないだろう」との声も聞かれますが、XBB系統は過去の感染で獲得した自然抗体を簡単にすり抜けてしまうほど免疫回避能力が高いことが分かっています。

 一方、佐藤医師によると、これまでBA・1やBA・2に感染した人の免疫力は、その後にワクチンを多く接種するほど強化されていたとの追跡調査データが最近になって発表されたといいます。

 同データではXBB系統への感染予防効果も立証されており、佐藤医師は「感染した人ほど追加接種は有効」と勧めています。

◇感染の不安からコンビニ受診が増加

 社会生活のあらゆる場面で求められていた感染対策は5類移行に伴いほぼ不要となり、自己判断に委ねられることとなりました。

 こうした中、延岡市内の医療機関では、発熱しているのに事前に連絡せず直接受診する人や、発熱が続いているのに自己検査(キット)や病院を受診せず数日後に感染が判明するケースが増えてきているといいます。

 また、熱が上がったため新型コロナの検査をしてもらおうとタクシーのように救急車を呼んだり、微熱や不眠で薬がないからと不安になって夜間急病センターを訪れる、いわゆる「コンビニ受診」も、ここに来て相次いでいるのだそうです。

 5類移行後の受診は季節性インフルエンザと同様の対応になり、県は「かかりつけ医やお近くの医療機関へ事前に連絡し、不織布マスクを着用するなどの感染防止対策を徹底した上で受診してください」と周知しています。

 症状が軽く、受診の必要がないと判断した場合は市販の検査キットを活用し、受診する医療機関に迷ったり新型コロナに感染して体調が急変した場合は県新型コロナ相談窓口(筍娃坑牽機Γ沓検Γ毅僑沓亜■横柑間対応)に電話するよう呼び掛けています。

◇検査キットは「国承認」を

 今後の流行に備えて購入しておくと安心なのが市販の検査キットですが、検査精度が不確かな商品もあり、佐藤医師は「国が承認した抗原検査キット」の使用を勧めています。

 国が承認する検査キットはパッケージに「体外診断用医薬品」または「第一類医薬品」と明記されていて、薬局やドラッグストア、インターネットでも購入できます。

 「研究用」と称する検査キットも販売されていますが、国が性能などを確認した物ではないため、佐藤医師は確認してから購入を判断するよう呼び掛けています。

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