本紙掲載日:2023-05-17
(3面)

特別支援学校卒業後、地域に居場所を

NPO法人teとteの会−日向

◆多機能型事業所−母親らが開所

 地域に不足しているとされる重症心身障害児者や医療的ケア児者のための多機能型事業所が1日、日向市比良町に開所した。立ち上げたのは母親らでつくる同市のNPO法人teとte(てとて)の会(甲斐麻央理事長)。地域に特別支援学校卒業後の子どもたちの居場所をつくろうと、大きな一歩を踏み出した。

 甲斐理事長(53)らによると、利用できる施設がない重症心身障害児者や医療的ケア児者は、同世代や地域の人と交流したり外出したりすることも難しく、社会の中で孤立しがち。家族は24時間続く介護や医療的ケアを一身に担い、日常を守っている。

 また、医療技術の進歩などにより重症心身障害児や医療的ケア児の数は増えており、特に、特別支援学校卒業後の受け皿が不足しているという。

 市内では昨年3月末時点で、重症心身障害児48人、医療的ケア児32人が生活しており、子どもたちの居場所の確保は「待ったなしの状況」という。

 そのため母親たちは、新たな受け皿として多機能型事業所の立ち上げを目指し、昨年8月にNPO法人を設立。介護職員初任者研修などの資格取得にも励んできた。

 とは言え「みんな普通のお母さん」と甲斐理事長。分からないことだらけの中、疲れや焦りから心の余裕をなくしてしまった時期もあったが、そのたび、活動の原点を見詰め直し、前を向いてきた。

 もともとteとteの会は、自主サークルとして活動を開始。子どもたちの日常を少しでも知ってもらいたいと、子どもと一緒に街中のイベントに参加するなど積極的に地域とつながり、自分たちから現状を発信してきた。

 「この子どもたちは決して一人では生きていけない。だからこそ親亡き後、託せる居場所をつくっておきたい」との思いからだった。

 開所した多機能型事業所「toko(とこ)とこ」は2階建て住宅で、家庭的な雰囲気の中、生活介護を軸に放課後等デイサービス、日中一時預かりの事業を行う。

 14日に行われた開所式には、これまで母親たちの活動を見守り、支援してきた関係者約40人が参加し、テープカットをするなどして祝った。

 その後、近くの比良コミュニティセンターへ移動。あいさつに立った甲斐理事長は「開所までの道のりはとても長く、決して平たんではなかった」と振り返り、「ここは子どもたちの居場所であり、私たち母親と社会をつなぐ場所でもある。『このまちのみんなと共に生きる』。その夢に向かい、これからも大切な仲間と、この地域の皆さんと手と手をつなぎ、歩いていきたい」と語った。

 またサプライズで、甲斐理事長ら中心メンバー3人に、NPO法人日向市手をつなぐ育成会理事長の新名揚子さん(68)から花束が手渡された。

 「障害のある子どもを育てる同じ母親として仲間として、これまでたくさん元気をもらってきた。だから、どうしても贈りたかった」と新名さん。エールを込め、うれし涙を浮かべた3人と強く抱き合った。

 多機能型事業所「tokoとこ」は日向こども園の隣。現在、利用者を募集中。見学や体験も受け付けている。

 問い合わせは同事業所(籠向95・0778、Eメールtetote.hyuga2022@cma.bbiq.jp)まで。

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