本紙掲載日:2023-05-30
(8面)

「よりすぐりの70点を一遍に」

藤井フミヤさんが自身の作品を解説

◆「延岡にしかない形の作品展」−7月2日まで延岡城・内藤記念博物館

 ミュージシャン活動の傍ら、画家としても活躍する藤井フミヤさんの作品展「デジタルとアナログで創造する藤井フミヤ展〜多様な想像新世界」が、延岡市天神小路の延岡城・内藤記念博物館で7月2日まで開かれている。今月12日には、藤井さんとアートテラー・とに〜さんによる「スペシャルトーク」が同市の野口遵記念館であった。大人気だった音楽番組「ザ・ベストテン」形式で、藤井さんが自身の作品をランキングで説明。県内外から訪れた大勢の来場者は、ステージに映し出された作品を見ながら解説を楽しんだ。

〈とに〜〉作品展には約70点が展示されています。すべてを紹介していただきたいのですが時間が限られているので、フミヤさんにベストテンを選んでいただきました。まず、第10位は「高原の少女」です。ポスターに使われている作品ですね。

〈藤井〉女性を水彩画で描き始めた頃の作品の一つです。
水彩画は子どもの時から慣れ親しんでいる絵の具なので、一番簡単だと思って描きました。油彩であれば上から塗ることができるのですが、水彩は修正ができません。そのため、酔っぱらって家に帰った時は絶対に触らないようにしています。
この作品は細かく描いていますが、サイズは大きくないので10日くらいで描き上げました。モデルはインターネットで探しました。描いているうちに高原に住んでいる少女に見えてきたので、「高原の少女」という作品名を付けました。

〈とに〜〉第9位は「AIGirlinSpace」です。

〈藤井〉宇宙に浮かんでいるAIを描いています。AI自身が宇宙に浮いて何かと交信している、そのようなイメージです。「AIGirlsinGarbage」という、ごみ箱に捨てられたAIを描いた作品とツインで飾っています。
人間が作ったものは博物館や美術館に入ったり世界遺産になったりしないと、最終的には全部ごみになると思っています。例えば、地球の周りには回収できない人工衛星がたくさんあります。それがごみみたいで、そのイメージをこの作品に落とし込んでいます。

〈とに〜〉第8位は「『Thegirlinthemirror』シリーズ」です。

〈藤井〉世界各国の女の子の顔を描いています。タイトルの通り、鏡に映っている女の子をイメージしています。13枚のうち12枚は女の子で、1枚は実際に鏡になっています。12枚の絵が鏡の周りを囲んでおり、その鏡に自分自身が映って作品になります。

〈とに〜〉第7位は「※錆(さ)※=月が円の漢字=びゆく裸婦機廚任后

〈藤井〉絵ではなく、針金で作った作品です。これは公園を歩いていた時にさびた針金を拾って、「なんかこれ、かっこいいな」と思いました。そして、針金が女の子のボディーっぽい曲がり方をしていて、「針金で女の子を作ったら面白いな」と思って作り始めました。
今のところ針金の作品は二つあり、もうちょっと大きいものも作りたいと思っています。

〈とに〜〉第6位は「FULLMOON」です。

〈藤井〉切り絵の作品です。簡単なボディーラインだけがあり、後はフリーで切っています。今思えば「おかしいんじゃないの」と思うくらい、ものすごく細かい作品です。
切り絵を始めたきっかけは、ファッションマガジンに載っているモデルの写真を面白がって切り取ったことです。切り取ったものにスプレーを掛けてみると「これは面白い作品になる」と思いました。それからは紙をちゃんと切って、切り絵を作るようになりました。

〈とに〜〉第5位は「StickermosaicMaria」です。

〈藤井〉子どもがいろいろな所に貼るキラキラしたファンシーシールでできています。20年前にヨーロッパで大聖堂に行ってモザイクに引かれたことがきっかけになり、たまたま見つけたキラキラしたシールをたくさん貼ってマリア様と観音像をモザイクで作りました。
目にはウサギのシールを使い、ウサギの耳がまつげを表現しています。近くで見ると、子どもも大人も楽しいと思います。

〈とに〜〉第4位は「GIRL」です。

〈藤井〉コンピューターで作った作品です。このモチーフは気に入っていて、作品を基に木を貼った型紙、プラスチックを貼った型紙、貼り絵用の下書きを作りました。
幼い時はテレビっ子で、ウルトラマンや仮面ライダー、マジンガーZなど、アニメはほとんどロボットアニメでした。この作品はその影響を受けていると思います。

〈とに〜〉第3位は「『EYES』シリーズ」です。

〈藤井〉これはまあまあ大きい作品です。コロナ禍で渋谷の街中を歩いていても目しか見えませんでした。その様子を描いた作品です。
描いている時にいろいろな国の女性の目を見ました。イスラム系の人の目は紫や金といったいろいろな色があり、本当にきれいでした。
そのため、この作品の目には1色だけではなく何色も使いました。下書きはコンピューターで作り、その上から色を塗りました。これこそが、デジタルとアナログが融合した作品です。

〈とに〜〉第2位は「龍王」です。

〈藤井〉新型コロナが何物かも分からない時に描いた作品です。新型コロナの終息を願いながら、ウイルスを含めた生物をつかさどる神というイメージで宗教画のような絵を描きました。
僕の癖として作品が細かくなっていきがちです。細かくならないように気を付けようと思うのですが、絵によっては職人的な気持ちが動いてしまうことがあります。

〈とに〜〉まさにそのような作品が、第1位の「ボッティチェリへのオマージュ『VenusandMars』の模写」です。

〈藤井〉ボールペンで描いた作品です。ボールペンは重ねても色が混ざりません。例えば、肌色はないので、オレンジとピンク、紫、時々緑を入れています。
ボールペンで自分のオリジナルの絵を描くよりルネサンスの絵画を描いた方が面白いなと感じました。そして、ダビンチとラファエロ、ボッティチェリの作品3点を描きました。ボッティチェリの作品だけが原寸大で、今回の作品展のメインになっています。

〈とに〜〉作品展の会場は、すごくかっこいい空間になっています。

〈藤井〉会場構成はデザイナーのおおうちおさむさんが考えてくださいました。会場によって毎回、構成が違うため延岡にしかない形の作品展となり、壁の色によって自分の絵への印象が変わります。

〈とに〜〉今まで同じ作品を見たことある人も、この作品展では全然違う作品に見えるということですね。

〈藤井〉そうです。自分で見ても「この絵すごいな」と感じてしまいます。
また、会場には写真が撮れる場所が数カ所あり、壁には僕の言葉が書かれているので読んでいただくと面白いと思います。
よりすぐりの70点を一遍に見ていただける機会は少ないので、ぜひご来場ください。

 作品展の観覧料は一般1000円、高大生は500円(学生証が必要)、中学生以下は無料。マイナンバーカードを提示すると100円割引き。
開館時間は午前9時〜午後5時(入場は同4時30分まで)。休館日は毎週月曜。

 館内では作品展の期間中、グッズの販売も行っている。グッズは公式図録や書籍、作品のポストカード、クリアファイル、Tシャツ、アクセサリーなど。販売時間は午前9時〜午後4時45分。

 問い合わせ先は延岡城・内藤記念博物館(箟箍21・7110)。

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