本紙掲載日:2023-07-28
(1面)

北川はゆま物語(下)

市民のよりどころとなる施設へ

◆スタッフの広末さん、原田さん、内越さん

 「今でこそ市内全域に広がっているけど、当時は私たち含めて従業員のほぼ全員が北川町内の人だった」と話すのは、開駅した1990年代から道の駅北川はゆまで働いている広末丸美さん(69)、原田信子さん(61)、内越枝美さん(48)。「退職された人たちが今でも買い物に来てくれるのがうれしい」と身近に感じられる30年の歴史を日々かみしめている。

◇一歩ずつ、よりよい道の駅に

 はゆまでは機能強化を目的に2017年から改装・改修が順次始まり、今年6月に一連の工事をほぼ完了した。少しずつ面影を変えていく職場を見てきた3人は「一歩ずつよりよい道の駅になってきたという印象。設備更新の効果は目覚ましいものがある」と語る。

 従業員の目線から特に注目したのはコロナ禍の期間。レストランやテイクアウトコーナー等の拡張、駐車場整備など大規模工事が集中的に行われた頃で、「目立つ工事が長く続くと客足は鈍りがちだが、そもそも人出がない時期だったので悪影響を最低限に抑えられた」(原田さん)。

◇防災機能を大幅に強化

 来場者の受け入れ体制とともに大幅に強化されたのが防災に関する機能。頻発する水害や南海トラフ大地震を想定し、自家発電システムや防災トイレ、貯水設備のほか、緊急避難スペースも整備した。同スペースは平時に会議室として使用し、有事の際には隣接するレストランホールとともに開放される。2022年5月に延岡市から緊急避難場所に指定され、同年9月の台風14号の災害時には市民約30人が利用した。

 度重なる水害に見舞われてきた北川町において、はゆまはこれまでにもレストラン機能を生かした炊き出し支援などを行っており、今後は積み重ねた経験と充実した設備が合わさることで、より効果的な災害対応に期待がかかる。

◇国交省の「防災道の駅」選定へ

 道の駅は2004年の新潟県中越地震や11年の東日本大震災などにおいて、一時避難所や救援活動拠点、緊急物資の基地等の役割を果たしたことから、広域防災拠点としての優位性が認知されるようになった。国土交通省は現在、「防災道の駅」制度を推進し、選定した各地の道の駅に重点的な支援を行っている。

 選定要件は、都道府県地域防災計画等で広域的な防災拠点に位置づけられていること、耐震化等により災害時でも業務実施が可能であることなど。県内では現在、都城市の道の駅「都城NiQLL(ニクル)」のみだが、のべおか道の駅株式会社の睫攀輔社長は「はゆまも要件はほぼ満たしている。近い将来に選定されれば」としている。

 はゆまスタッフ、北川町住民として数々の自然災害と向き合ってきた広末さんらは「(はゆまは)国道と高速道路に接続し、硬い岩盤に支えられている立地。働く身からしても安心感がある。市民のよりどころとなる施設として一層進化していってほしい」と願っている。

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