本紙掲載日:2023-07-31
(3面)

経口ワクチン散布を演習

全国で広がりを見せる野生イノシシの豚熱への感染確認に備えるため、県が実施した経口ワクチン散布演習

豚熱の発生に備え−九州初、県が実施

◆農水省が協力−隣県担当者など参加

 野生イノシシの豚熱への感染確認が北海道と九州を除く全国で広がりを見せる中、県は26日、九州で確認された際の感染拡大防止に必要な野生イノシシへの経口ワクチン散布演習を県総合農業試験場などで開いた。県をはじめ畜産協会、猟友会など関係団体から約40人が参加し、専門家から散布方法などを学んだ。同演習の実施は九州初。

 野生イノシシへの経口ワクチン散布は県が経験したことない業務のため、業務の把握や効果的な散布方法を学ぶことで作業に従事する職員の知見・技術を向上させようと演習を開いた。また、陽性が確認された場合は広域連携が必須なため、隣県3県(大分、熊本、鹿児島)の家畜防疫担当者にも声を掛けた。

 演習は、農林水産省動物衛生課の永田知史課長補佐が「豚熱および豚熱対策の概要について」、農研機構の動物行動管理グループの平田滋樹上級研究員が「豚熱等対策のための野生イノシシ経口ワクチン誘引と散布方法」をテーマにした座学の後、同試験場の裏山で実習が行われた。

 実習では、防疫服に手袋、長靴、ブーツカバーなどを着用した平田上席研究員らが、ワクチン散布係や誘引餌運搬・散布係、ワクチン運搬係、記録連絡係の4人一組で本番さながらに実施。地面に置いた経口ワクチン(模擬)を野生イノシシに食べさせるため、落ち葉や土をかぶせ、誘引用の飼料用トウモロコシをまくなどした。

 農林水産省によると、豚熱は、豚熱ウイルスにより豚やイノシシに感染する家畜伝染病。国内では2018年9月に岐阜県で26年ぶりに発生した後、今年7月1日時点で飼養豚としては19都県、野生イノシシは34都府県で感染が確認されている。県は九州への侵入は予断を許さない状況として警戒している。

 平田上席研究員は実習で、「イノシシのいそうな散布地点はウイルスが大量に存在している可能性があるので、感染拡大防止のための散布作業がまん延につながらないよう消毒を徹底してほしい」などアドバイス。

 演習に参加した県猟友会の渡部彊豌馗后複牽院法甕箍市=は「県内に入ってくるようなことがあれば、イノシシの通り道や生息している場所、食跡といった痕跡などの情報提供に努めるなど協力していきたい」と話していた。
県総合農業試験場の演習の後は、実際にイノシシが頻繁に出現する国富町八代北俣地区の林地に場所を移し、参加者が散布作業を体験。27日午前は意見交換会を行った。

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