本紙掲載日:2023-08-01
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初の2季連続営業断念−五ケ瀬町スキー場

五ケ瀬町役場で開かれた行財政改革特別委員会で、スキー場の営業可否について言及する小迫町長

台風14号被災のアクセス道−復旧間に合わず

◆小迫町長「断腸の思い」

 五ケ瀬町が出資する第3セクター・五ケ瀬ハイランド(社長・小迫幸弘町長)は31日、運営するスキー場の営業を昨シーズンに続いて断念すると発表した。昨年9月に襲来した台風14号被害によるもので、2季連続の営業休止は初。同日開かれた町議会の行財政改革特別委員会で、小迫町長が明かした。

 五ケ瀬ハイランドスキー場は、向坂山(標高1684メートル)など九州有数の高山地帯に位置し、日本最南端の天然スキー場として人気のレジャースポット。被災前年の2021年シーズンは天候に恵まれ、80日間の営業に2万4756人(前季比5割増)が訪れた。

 しかし、昨年9月の台風14号により、アクセス道である町道本屋敷・波帰線および波帰林道で大規模な被害が複数発生。特に、麓の波帰集落近くで発生した土砂崩れには、奥行き130メートル×幅80メートルにわたる地滑りの兆候が見られ、崩れたのり面がガードレールを突き破って下を流れる波帰川まで滑り落ち、町道本屋敷・波帰線の約30メートル区間が土砂や流木で遮られた。

 町は今冬の営業再開を目指し、各災害復旧工事やスキー場を管理するための迂回(うかい)路として町道本屋敷・国見線および白岩林道の整備を進めてきたが、地滑りの兆候が見られた同被災箇所においては05年にも被災しており、通常の災害復旧工事を施しても再び同規模の災害に見舞われる可能性が高いことから、地滑り滑動計測を待ち、結果に応じた工法で工事する必要があること▽同被災箇所が復旧しなければ、スキー場管理道路である波帰林道の復旧に相当の時間を要すること▽町道本屋敷・国見線および白岩林道の迂回路活用に関しては、急勾配やカーブが多く、ガードレールが未設置の区間もあることなどから安全性が確保できないこと−−といった課題が浮上したため、2シーズン続けての営業休止を決断した。

 委員会では、建設課が災害の概要や現況、企画課が今後の構想などを説明。町道本屋敷・波帰線で発生した主な被災5カ所のうち2カ所は今年中に復旧予定で、残り3カ所のうち2カ所は未着手だが、ほかの被災箇所の進捗(しんちょく)次第ですぐにでも工事の発注が可能な状態にある。

 地滑りの兆候が見られた最も大規模な被災箇所については、昨年12月ごろからボーリング調査を始め、現在も調査中のため復旧の見通しは立っていないという。

 小迫町長は「断腸の思い」と前置き、「今決断しなければ運営に携わる多方面に迷惑を掛けてしまうことになりかねず、被災の規模も数も多いため、復旧に想定以上の時間を要すると判断した。体制を整え、来年こそは必ずオープンにこぎ着けたい」と理解を求めた。

 これに対し、町議会は「無理に再開すると、逆にスキー場の評判を下げてしまう可能性がある」と理解を示しつつ「休止期間が長くなると関心が薄れていくことも事実。営業再開後の集客手段を考えておく必要がある」「土砂災害の発生リスクを下げるため、水源涵(かん)養林の整備も視野に」「宿泊部門である木地屋への助成は考えているか」といった意見が出され、小迫町長は「都度町議会と話し合い、外部から(スキー場の運営や活用に関する)専門家を招くことも視野に検討したい」と答えた。

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