本紙掲載日:2023-08-12
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宮崎大学医学部外科学講座・看護部

ストーマケアのVRトレーニングアプリ開発で会見する甲斐健吾医師ら(7日、宮崎大学清武キャンパス)
VRの試作映像を使ったデモンストレーション(7日、宮崎大学清武キャンパス)

ストーマケア習得のために

◆体感型−VRトレーニングアプリ開発へ・400万円目標に寄付金募集

 宮崎大学医学部外科学講座・看護部は7日、人工肛門(ストーマ)を装着するオストメイトがケア方法を習得する「VR(仮想現実)トレーニングアプリ」開発を進めていると発表した。来年度の実用化を目指す。開発資金は400万円を目標にクラウドファンディングに挑戦するとし、同日から寄付募集を始めた。

 ストーマは、大腸疾患の手術後や大腸の閉塞(へいそく)などによって本来の肛門を使った排便ができなくなった場合に、排せつ物を体外に排出するために腸を腹部に誘導して設けた人工的な排せつ口。厚労省の報告では国内のオストメイトは20万人超、県内は約2千人とされる。

 オストメイトは、排せつ物をためる袋状の装具「パウチ」の着脱やストーマ周辺の洗浄など自ら行う管理方法(ストーマセルフケア)を習得する必要があるが、短い入院期間にトレーニングの機会は限られているのが現状。排せつ物の漏れなど、在宅での実践への不安の声は少なくないという。

 現在、開発中の同アプリは、良質なストーマセルフケアを習得している先輩オストメイトの視点や手の動きを主観的目線でVR対応カメラで撮影。その映像を学び始めのオストメイトに疑似体験としてシェアすることで、退院後いつでも、どこでも、何度でもトレーニングできる利点がある。

 開発は、外科学講座助教の甲斐健吾医師と霤長篆丹綮奸■廝錬奪福璽后僻乕罅η咾擦張吋認定看護師)の篠田裕美さん、竹入恵美さんの計4人で昨年9月にプロジェクトを立ち上げて始動。現在は宮崎市の企業や関係団体、県などと連携して進め、試作映像を製作するなどしている。

 今後は、オストメイト視点の映像のほかに専門ナース視点の映像を撮影し、当時者だけでなく医療従事者やケアを行う介護士、医療現場を目指す学生の教材向けも製作し、ストーマケアの関心を高めたい考え。当時者の体形に合わせた複数パターンのVR映像も製作する予定という。

 クラウドファンディングは、専用サイト「READYFOR(レディフォー)」で9月29日午後11時まで実施している。テーマは「VRでストーマケアを習得!体感型トレーニングアプリを開発したい」で、寄付コースは3千円、1万円、10万円。

 同日、同大学清武キャンパスで会見した甲斐助教=延岡市出身=は「主観的目線の映像で同じ経験を共有できる。クラウドファンディングを通したPR活動によりストーマ、オストメイト、プロジェクトを多くの人に知っていただき、新しいアイデアを活動に反映させたい」と話していた。

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