本紙掲載日:2023-08-23
(8面)

巨典の−故郷は遠きにありて思うもの(29)

延岡市の隣、大分県佐伯市出身塩月理沙さん−福岡市中央区唐人町商店街

◆小さな弁当屋からアンテナショップを出店−費用は自腹「商店街を元気にしたい」一心で

 福岡市中央区にある「唐人町商店街」。延岡市の山下新天街よりも規模の小さいアーケード商店街に、大分県佐伯市のアンテナショップがあります。ここで、ふるさとの大分県と福岡県をこよなく愛する一人の女性が、元気に活動しています。

 延岡市の隣町、大分県佐伯市蒲江の民宿の娘に生まれた塩月理沙さん(47)。

 18歳まで佐伯市で育ち、福岡市の西南学院大学へと進学します。卒業後は司法試験にチャレンジしますが、なかなか難関を突破できませんでした。そんな中、親戚の推しで、福岡県春日市の魚屋さんの後継者になります。というよりも「無理やり継がされた!」と本人は笑います。

 経験も全くないゼロからのスタートでしたが、ふるさと佐伯市蒲江が、そして親戚の皆さんが大いにバックアップしてくれ、当初は順風満帆でした。

 しかし、好事魔多し。塩月さんは借金を背負ってしまい、唐人町商店街に移り、小さなお弁当屋さんを開きます。電気料金が払えず、電気が止まったこともあったそうです。

 そんな苦しい中、優しく手を差し伸べてくれたのが唐人町商店街のご近所の皆さんたちでした。折れそうになる心を奮い立たせながら、常連さんのために、ふるさと蒲江の新鮮な魚を使ってリーズナブルな弁当、総菜を作り続けました。

 そして、少しだけ軌道に乗ってきた頃、塩月さんは唐人町商店街にアンテナショップを出店します。費用は2300万円。すべて自腹の借金です。しかし、「この店で大好きなふるさと大分をPRし、お世話になった唐人町商店街をより元気にしたい!」。その一心でアンテナショップ「KATARU(語る)」をオープンさせたのです。

 店内には、大分県の特産品がずらりと並びます。食堂も兼ねており、大分の名物料理や蒲江の干物などでお酒も飲めます。

 この店を通して、佐伯市の生産者も自分たちが作るものに自信を深めるようになりました。一方で、ご近所のコミュニケーションの場としても欠かせない存在に成長しているようです。


◇特技「人と人とをつなぐこと」そんな塩月さんに一問一答です

−−なぜ、そんなにふるさと佐伯市が好きなんですか?

私のDNAは蒲江で授かったからでしょう。さらには「オール大分」という一般社団法人があり、大分県内の有名企業の社長さんたちが手弁当で、全国各地で大分をPRするイベントを開いているんですが、会場のテント設営から、社長さんたちが仲良く汗を流しているんです。それを見た時に「大分も捨てたもんじゃねーなー」と思いました(笑)。ますます大分が好きになりました。

−−塩月さんの特技は何ですか?

今は、「人と人とをつなぐこと」。例えば、佐伯市のカボスヒラメの水産業者と、日田市の葉わさびのオリーブオイルソースの業者の皆さんと一緒に食のイベントを開くなどいろいろな物や人をつないでいます。そこから新しい何かが生まれたら本当に楽しいし、今後は大分県にこだわらず「オール九州」を目指したいと思っています。

◇宮崎「いいところ」行ってみたい高千穂

−−宮崎県はどう見えてますか?

良いところだと思います。個人的には高千穂に行ってみたいです。いずれは福岡の旅行会社と手を組んで、福岡発の「大分・宮崎旅行」なども企画したいと思っています。

−−地域も企業も情報発信に躍起になっていますが、改めて情報発信に必要なことは何ですか?

一つは、誰よりもふるさとを好きになること。もう一つは、人と人とを楽しくつなぐこと。このシンプルな二つのことが一番大切だと思います。

−−大分県も宮崎県も、同じ日豊方言「よだきい(おっくうだ、面倒くさい)」を使う土地柄ですが、塩月さんを見てると常に全力。よだきがる様子がありませんね?

もう、佐伯市と唐人町のために生きていこうと決めてますから。そして人のために頑張るのだったら「よだきい」って感じませんよね。


        ▽         ▽

 塩月さんは、人と人、地域と地域をつなぐ、いわゆる「コラボレーション」がとても上手な人です。今後もきっと、九州各地の人や物をつないでいくでしょう。

 私も改めて、県北と福岡、つながることの大切さを考えていきたいと思います。

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