本紙掲載日:2023-09-06
(3面)

第26回のべおか天下一薪能

本番へ子どもたちと稽古

◆10月7日・延岡城址で開催

 「第26回のべおか天下一薪能(てんがいちたきぎのう)」は10月7日午後5時半から、延岡市本小路の延岡城址(し)二の丸広場で行われる。出演する観世流能楽師シテ方の片山九郎右衛門さん(58)が1日に来延し、出演する地元の子どもたちとの稽古を公開。その後の会見で「新型コロナの『5類』移行後初の公演であり、第1回からプロデュースさせてもらっている私にとって、ここは特別な場所。どんどん新しいお客さんと出会いたい」と思いを語った。NPO法人のべおか天下一市民交流機構(松下宏理事長)など主催。



 演目は、天下一薪能では2006年以来2度目となる能「井筒(いづつ)」、同年以来3度目となる能「鞍馬天狗(くらまてんぐ)」、05年以来2度目となる狂言「千鳥(ちどり)」。

 能「鞍馬天狗」では、花見の稚児役(子方)を地元の小中学生13人が務める。延岡小5年の友清茉耶さんが、後に源義経となる牛若丸役(子方)に挑戦し、大天狗役(シテ)の片山さんと共演する。地元の子どもが務めるのは3度目の公演にして初。

 1日はカルチャープラザのべおかで片山さんと初の稽古。子どもたちは約1時間、謡の節回しや足拍子の強弱などについて熱の入った指導を受けた。

 片山さんは「真っすぐな力強さが一番大切。かけがえのない一回一回の稽古に緊張感を持って臨んでほしい」と子どもたちに呼び掛けた。

 友清さんは稽古後、「緊張したけど思った以上に声が出せたので良かった。練習でも本番でも大きな声を出していきたい」。

 今回初めて出演する南方小5年の木村一喜さんは「本番は緊張すると思うが、練習通りに舞台に立ちたい」、旭小6年の上野七菜子さんは「本番では良いものを見せたい。先生の教えを無駄にしないようにかっこよく演じたい」と意気込みを語った。

 天下一薪能では毎回、延岡市が所蔵する内藤家旧蔵の能面が使用される。今回は、能「鞍馬天狗」に登場する大天狗役(シテ)に「大べし見(おおべしみ)」、「井筒」に登場する紀有常の娘の霊役(シテ)に「小面(こおもて)」が使用される予定という。

 チケットは指定SS席1万円、指定S席8千円、自由A席5千円。詳しくは同交流機構(電話延岡33・0248)まで。

◆天下一薪能−片山九郎右衛門さんの会見要旨

−−新型コロナの『5類』移行後、初の公演です。

どんどん新しいお客さんと出会いたい。本当に渇望しています。第1回からプ
ロデュースさせてもらい、ここは私にとって特別な場所です。
私たちの世界に「風姿花伝(ふうしかでん)」という言葉がありますが、初め
は「能面をどう使うか」「千人殺しの石垣をどう使うか」という小さな風だっ
たかもしれません。
そこから目に見えない花の香りや風の向きまでも、この延岡は大事にしてくだ
さった。みんなで見守り、みんなで育てていただいた。文化とは、そういうこ
とではないでしょうか。
本当にかけがえのないものですが、コロナ禍でなくなったものがたくさんあっ
たように、この薪能もたった一年で壊れかねない、危ういものです。だからこ
そ大事にしてほしいと思っています。

−−能「井筒」の見どころは。

能の大成者として知られる世阿弥の小さな小さな恋をテーマにした名曲。悲し
いこともたくさんあったけれども、最後は2人、一生懸命に添い遂げていく、
とても素朴な恋の物語です。

−−能「鞍馬天狗」の見どころは。

3度目の公演です。使用予定の内藤家旧蔵の能面「大べし見」は、おそらく国
内に2面しかない名工の作品で、この能面を出したくて「鞍馬天狗」を公演す
ると言ってもいい。
近づきがたいほど怖い天狗と可憐(かれん)な少年が出会い、心が交わり、互
いに慈しみ合う。天狗は牛若丸に自分の全てをささげ、その愛にも似た気持ち
が、この一曲を支えています。

−−初の地元子方について。

OB、OGが一生懸命に教えてくれています。2002年から始まった「こど
も能楽プロジェクト」の積み重ねが、今回につながっています。
思い切りおなかから声を出して演じてほしい。言葉が美しい汗をおび、人々の
心に直球で突き刺さる。これが子方の意義です。

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