本紙掲載日:2023-09-08
(8面)

難聴「軽く考えないで」−県立延岡病院県民健康講座

耳鼻咽喉科・猿渡医師が講話

 県立延岡病院の県民健康講座は18日、延岡市新小路の同病院であり、耳鼻咽喉科副医長の猿渡英美医師が「難聴の話」をテーマに話した。

◆聞こえに不安「まずは受診」

 猿渡医師は、一般的に耳が遠くなるのは高齢になってからだと思われがちだが、「実際には55歳を過ぎた頃から難聴になる人が多くなり、60歳を過ぎると急激に増加する」との調査結果を紹介。ただし、聞こえにくくなるのは加齢性の難聴だけではないと指摘した。

 その一例として、耳あかが詰まって耳の穴をふさいだり、慢性中耳炎で鼓膜に穴が開いたりするなどの伝音難聴も多く、処置や手術で治療できると説明。まずは耳鼻科を受診して、聞こえにくくなった理由を確定するよう求めた。

 その上で加齢性難聴には、音がよく聞こえない▽大きな声でも言葉が聞き分けられない▽いろいろな音の中から聞きたい音を選べない▽高い音から聞こえにくくなる▽早口だと聞き取りづらいといった症状があることを例示。

 「テレビは少し音量を上げれば聞こえる」「聞き返せば分かる」と本人が平気でも、周囲の人は「テレビの音がもう少し小さければ」「何度も言わせないでほしい」「声が大きい」と負担に感じていることが多く、「家族の方などからそうしたことを言われた場合は大丈夫と思わず、一度受診してほしい」と話した。

 また、加齢性難聴が死亡率、アルツハイマー型認知症やうつ病発症率の上昇につながるとする海外の追跡調査結果を報告。「放っておけばこういうことにもつながる可能性がある。難聴を軽いものと考えず気を付けてもらえれば」と呼び掛けた。

 加齢性難聴と診断された場合にはできるだけ早めに補聴器を利用するよう推奨。その理由として、補聴器を着けてもすぐに聞こえがよくなるわけではなく、脳が慣れるまでに数カ月から半年ほどを要し、聞こえにくくなってからの期間が長いほど、慣れるのに苦労するからだと語った。

 使い始めは、会話だけでなく周囲の話し声や食器のぶつかる音などもしっかり聞こえるようになるため、雑音がうるさく感じると説明。これは難聴に伴い、あるのが当たり前だった生活音の聞き取り方を忘れてしまうのが原因で、「少しずつ補聴器の音量を上げながら慣れていくことが大切」と話した。

 同じように脳機能の衰えで、会話は聞き取れても言葉として認識できないことがあり、そうした神経伝達を保つためにも「早め早めに補聴器を着けてほしい」とアドバイス。「ピーピー」と音が漏れるのは耳の穴に隙間があると起きるハウリングで、自分に合ったオーダーメードの補聴器にすることで解消すると説明した。

 一方、「補聴器に頼ると、もっと耳が悪くなる」というのは誤解で、過大な音量で起きる騒音性難聴とは無関係だと強調。補聴器の聞こえ方に慣れるために、会話時などだけでなく常に着用しておくよう勧めた。

 補聴器でも聞こえづらくなった場合は、内耳に電極を入れて音を振動にして伝える人工内耳があり、先天性難聴などで赤ちゃんから使用されていると紹介。最後に改めて、「生き生きとした人生を送るためにも、聞こえにくさと向き合いましょう」として、聞こえに不安があれば、まずは身近な開業医を受診するよう呼び掛けた。

◇次回は10月18日−テーマは「治療と仕事の両立支援」

 次回の県民健康講座は10月18日午後6時から、県立延岡病院2階講堂で開催する。両立支援促進員の柳田美智子さんが「げんきに働き続けるために〜治療と仕事の両立支援について」をテーマに講演する。

 参加希望者は病院代表電話(箟箍32・6181)から患者支援センターに名前と連絡先を伝え申し込むこと。受講者には延岡市の健康長寿ポイント100ポイントとのべおか健康マイレージアプリポイント50ポイントが進呈される。

その他の記事/過去の記事

印刷には対応しておりません。
当サイトは、閲覧のみになります。

写真の販売:https://stg-yukan-daily.epitas.com/provider/
写真販売所ガイド:https://yukan-daily.co.jp/photo-guide/page/