本紙掲載日:2023-09-11
(3面)

デイリー健康大学日向会場(上)

口腔がんについて話す酒井院長

「知っておきたい口腔がんの知識」さかい歯科・口腔外科医院・酒井博史院長

 公益財団法人デイリー健康福祉事業団(松下勝文代表理事)の第28期デイリー「健康大学」日向会場第1回講座が、このほど日向市文化交流センターで開かれました。さかい歯科・口腔外科医院(同市財光寺)の酒井博史院長が「知っておきたい口腔(こうくう)がんの知識」をテーマに、口腔がんの特徴や治療法、予防の心掛けなどについて話しました。要旨を掲載します。

◆原因は慢性的な刺激−ウイルス、細菌なども

 口腔外科は、口腔(口の中)、顎、顔面ならびにその隣接組織に現れる先天性および後天性の疾患を扱う診療科です。この領域にはさまざまな疾患が発生します。その一つに「口腔がん」といわれる悪性腫瘍があります。

 口腔がんは、口の中にできるがんです。最新のデータでは、日本で1年間に約1万1400人が口腔がんと診断され、男女別では男性が約6800人、女性が約4700人とやや男性に多い特徴があります。

 口の中は直接見て触ることができるので、早く発見しやすいはずですが、初期のがんの状態で受診する人は極めて少ないという現実があります。

 舌にできたがんを「舌がん」といいます。口腔がんの中で舌がんが一番多く、約50%を占めます。舌縁部と呼ばれる舌の横の部分にできるケースがほとんどです。

 歯茎にできるがんを「歯肉がん」といいます。舌がんに次いで多く、口腔がんの約25%を占めます。下の歯茎に多い傾向にあります。

 頬の内側の頬(きょう)粘膜にできるものは「頬粘膜がん」といいます。口腔がんの約10%を占めます。

 舌を上げた時、下にできる隙間の部分を口底、口腔底といい、ここにできるがんを「口腔底がん」といいます。口腔がんの約10%を占め、男性に多い特徴があり、男女比は10対1といわれています。舌の下には神経や唾液の管や血管などがあるため、他の口腔がんより手術内容が難しくなることが多いです。

 元々正常な組織が機械的な刺激やたばこなどの発がん物質、ウイルス感染、遺伝子の変化によって組織が変化し、がんになっていきます。がつがつ頬の内側をかんだり、何かが強く当たっている慢性的な刺激も原因になります。

 ウイルス、細菌も原因といわれています。子宮頸(けい)がんの原因の一つといわれているヒトパピローマウィルスなども口腔がんの原因という報告もあります。

 日本人の死亡原因の1位は、がんによるものです。がんの中で死亡率1位は膵臓(すいぞう)がんで、年間約4万4000人が罹患(りかん)するといわれています。死亡率は約90%です。

 一方で、皮膚がんは年間約2万5000人といわれ、死亡率は約7%です。目に見える所なので発見が早いから低いのだと思います。

 口腔がんは、咽頭がんとの合算ではありますが、年間約2万4000人といわれ、死亡率は約33%です。口の中は本来、皮膚と同じように見える場所のはずなので、皮膚がんの死亡率と比べ、かなり驚くべき差と思います。

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