本紙掲載日:2023-09-12
(3面)

デイリー健康大学日向会場(中)

口腔がんについて話す酒井院長

「知っておきたい口腔がんの知識」さかい歯科・口腔外科医院・酒井博史院長

◆治らない口内炎は注意を−白くなった粘膜、初期症状の一つ

 口腔(こうくう)がん、咽頭がんの死亡率は2004年まで増え続けていました。世界ではWHO(世界保健機関)から口腔検診による口腔がんの早期発見促進勧告が出ていますが、先進国で増加しているのは日本だけでした。

 米国で口腔・咽頭がんの死亡率は、19・1%と日本より低いです。なぜかというと、米国では半年に1度の口腔検診が義務付けられています。その背景には、日本のような皆保険制度の仕組みがなく、高額な医療費の負担を避けるために多くの人が民間の保険に加入していることがあります。保険会社が口腔検診を義務付けるようなシステムになっているからこそ早期発見につながり、両国で死亡率に差が生じているのだと思います。

 口腔がんの初期症状として、なかなか治らない口内炎は注意が必要です。また、舌の一部分の表面が赤くただれたり、しこりのようなものなどは初期症状として認められます。もこもことした塊のような腫れ方や、なかなか止まらない歯茎の出血も少し心配です。

 歯肉がんは顎の骨にも浸潤するので、急に一部の歯がぐらぐらするという症状も認められます。また、拭っても取れないような粘膜の白い状態があれば、初期の口腔がんの可能性があります。

 口内炎ができやすい場所は、口腔がんの発生しやすい場所と非常によく似ています。なかなか治らない口内炎は口腔がんの可能性があります。2週間以上治らない場合は、歯科医などで一度診てもらってください。

 口腔がんの場合、できてしまうと、そこからどんどん広がっていきます。口内炎は傷が小さくなってくると治る傾向にありますが、口腔がんは一度できてしまうと基本的に小さくなることはなく、時間がたつにつれて大きく増殖していきます。

 口の中の粘膜が白くなっていることも初期症状の一つです。それらは口腔潜在的悪性疾患といい、がんになる前の病変の可能性があります。必ずがんになるというわけではありませんが、前もって手術を勧めることが多いです。状況に応じて経過観察で様子を見ていくこともあります。

 口腔がんの検診は視診と触診になります。見た目だけで確定診断をつけることはないので、病理検査をもって確定診断になります。病理検査には、表面の細胞を取る細胞診と、一部分だけ組織を取る組織生検があります。

 画像検査も行います。CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)、PET―CT(ポジトロン断層法)の3種類があります。がんの広がりを正確に診断するために行うことと、首のリンパ節への転移や他の臓器への転移を見つけるのに大きな役割を果たしています。

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