本紙掲載日:2023-09-29
(2面)

希少動植物「守っていきたい」

重要生息地を学ぶ−南浦中生

 昨年3月に県内14カ所目の重要生息地に指定された延岡市の「熊野江川河口海浜域」について学ぶ授業が27日、近くの市立南浦中学校(濱下裕二校長、13人)で行われ、講話や観察を通し、身近に生息する希少野生動植物への理解を深めた。

◆宮崎大、三浦名誉教授を迎えて

 授業には、熊野江小学校(内田由美子校長、4人)の児童、教職員も参加。講師は長年、同所での調査研究を続けてきた宮崎大学の三浦知之名誉教授(72)が務めた。

 三浦さんは同所について、満潮時と干潮時の写真を見せながら、「水が上がったり、下がったりと環境がすごく変化する場所」として、「川と海の水が混ざり合っている場所でも、乾いても、耐えられる生物がそこにいる」と説明した。

 同所に生息する動物は、三浦さんが確認しただけでも176種(貝類71種、甲殻類58種、ハゼ類27種、他魚類20種)あり、環境省のレッドリストに登録されているだけでも17種あるという。

 このうち、2004年5月に初めて採集したカニは、それまでどこでも発見されていない新種で、三浦さんが「クマノエミオスジガニ」と命名。絶滅が心配される生物で、その後、三重県と長崎県五島の特定の地域で発見されたが、今のところ3カ所のみ。その上で、「このように点在して見つかるということは、昔は各地にいて、ここだけ生き残ったという考え方が適切」と説明した。

 また、クマノエミオスジガニを発見した人のうち一人は当時、小学生だった三浦さんの子どもで、「みんなも知らない動物を見つけた時、周りの大人に伝えたら珍しい発見につながるかもしれない」と呼び掛けた。

 観察会では、実際に河口海浜域の中へ。三浦さんでも同所では初めて見たという天然記念物のムラサキオカヤドカリも見つかり、「天然記念物」との紹介に子どもも大人も大喜び。紫色の花を咲かせていた「ハマゴウ」は小さな実も付けており、「香りが良く、昔の人は乾燥させて枕に入れていた」ということも紹介された。

 砂浜を猛スピードで走っていたスナガニは、全員総掛かりで追い掛け、生徒1人が手でつかみ上げると歓声を上げて喜んだ。このほか、波に乗って移動し、引き際に砂に潜るという「ナミノコガイ」も発見。身近に貴重な動植物が生息すると知った子どもたちは、目を輝かせて観察していた。

 3年の山下由唯璃さん(15)は「熊野江にいる珍しい生物を実際に見ることができ、本当にいるんだと実感した。絶滅しないよう、砂浜の清掃などで熊野江の自然を守っていきたい」と話した。

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