本紙掲載日:2023-10-02
(3面)

デイリー健康大学延岡会場(上)

噛むことと健康長寿との関係について説明する染矢院長

「よく噛むことから始める健康長寿」四倉歯科医院・染矢哲郎院長

 公益財団法人夕刊デイリー健康福祉事業団(松下勝文代表理事)の第28期デイリー「健康大学」延岡会場第1回講座がこのほど、延岡市社会教育センターで開かれました。四倉歯科医院の染矢哲郎院長が「よく噛(か)むことから始める健康長寿」をテーマに話しました。要旨を掲載します。

◆長寿達成の要因は−−残っている歯の本数だった

 亡くなる直前まで自分らしく元気に暮らしたいというのは、皆さんが思っていらっしゃることではないでしょうか。

 健康寿命はだんだん延びていて、2019年の統計で男性が72・76歳、女性は75・38歳ということです。10年前に比べ男性が2年2カ月、女性が1年7カ月延びました。

 平均すると、床に伏せずに元気で自分らしく過ごせる期間が2年延びたということで、これはすごく意味のある数字だと思います。ますます若々しく元気で楽しく自分らしく過ごす方は、これから増えてくると思います。その時に口がものすごく大事になります。

 何となく、お酒を飲まない、たばこも吸わない人が健康長寿と思われるかもしれませんが、実は、世界中の研究ではっきりした一番の条件は、「残っている歯の本数」でした。私たちも驚きました。

 残っている歯の本数が多く、しかも上下の歯でしっかり噛めるということが、健康長寿を達成するために一番重要なファクター(要因)だったんです。

 そこで、「卑弥呼の歯がいーぜ!」という言葉を覚えていただきたいと思います。「肥満防止」「味覚の発達」「言葉=コミュニケーション力の発達」「脳の発達」「歯の病気予防」「がんの予防」「胃腸快調」「全力投球」の頭文字をつなげ、よく噛むことでどんないいことがあるかをまとめた標語です。

 卑弥呼の時代の食事は魏志倭人伝を参考に再現すると、栗、乾燥したクルミ、カワハギの乾物、アユの塩焼き、ハマグリの塩汁、長芋の煮物、ノビル(野生のネギ)、玄米のおこわ、とどれもよく噛まないと食べられません。現代の人で実験したところ、全部食べるために必要な噛む回数は約4千回で、1時間近くかかりました。

 これに比べ、われわれのいまの食事は噛む回数が平均620回、食事時間は11分です。この数千年で噛む回数は6分の1から7分の1まで短くなり、噛まない方が非常に増えてしまいました。

 ところが、人間の体はそんなに急に進化はせず、しっかり噛むことで健康バランスを取るようにつくられているので、噛まないことでいろんな支障が出てくるわけです。

【プロフィル】延岡市出身。慶應義塾高校を経て日本歯科大学歯学部を卒業。1989年から四倉歯科医院副院長、91年から現職。92〜2008年には聖心ウルスラ学園歯科衛生士専門学校講師を歴任。医学博士、かみ合わせ認定医。

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