本紙掲載日:2023-10-04
(3面)

デイリー健康大学延岡会場(下)

ゆっくり、よく噛んで食べるようアドバイスする染矢院長

「よく噛むことからはじめる健康長寿」四倉歯科医院・染矢哲郎院長

◆認知症・噛めない期間と相関関係−誤嚥防止にエクササイズを

 最後に全力投球ですが、ここ一番で力が必要なときに「歯を食いしばって」頑張るといいますが、この言葉は理にかなっていて、歯を食いしばると脳が準備をして体の筋肉が活動的になり、力を出すことができるんです。

 おまけに美容にもいい、という話です。唾液の中の上皮成長因子(EGF)というホルモンには皮膚に張りを与え若々しくする作用があり、胃腸粘膜も強くします。また、よく噛むと口の周りの筋肉を使うので小顔効果があります。顔や頭部の血行も促進されるので頭髪に栄養が行き渡りやすくなり、発毛、育毛にも効果的です。

 さらに、噛むことで繰り返すリズムは脳の中のセロトニンを活性化し、心をリラックスさせ集中力を高めます。よく大リーグの投手などが試合中にガムを噛むのは、それを体験的に知っているからで、実はリラックスしているわけです。

 特に高齢者はよく噛むことが大切です。まず、噛めない期間が長いほど重度の認知症になるという相関関係が明らかになっています。また、噛みしめることができないと力が入らず、体を安定することが難しくなるため転倒しやすくなります。歯があることで頭の位置も安定します。

 70歳以上の高齢者を対象に、残っている歯の本数を調べた東北大学の調査では、認知機能が正常な人は平均15本、認知症予備軍は13本、認知症の疑いがある人たちは10本ありませんでした。MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の大きさを調べたところ、残っている歯の数が少ない人ほど海馬や前頭葉の容積が減少していたとの報告もあります。

 では、誤嚥(ごえん)防止のための食前のエクササイズを紹介します。まず、椅子に深く腰掛けて背筋を伸ばし、鼻からゆっくり息を吸っておへその下に空気をため込み、口を小さくすぼめて息を少なくゆっくりと吐きながら、頭を左右5回ずつゆっくり大きく回して気持ちを落ち着けます。

 次に、左右の頬を交互に目いっぱい10回膨らませ、口の周りの筋肉に食べ物を受け入れる準備運動をさせます。最後に腹式呼吸をしながら目を閉じ、「ゆっくり食べる」と心に決めましょう。

 食べるときは、一口30回を目安によく噛み、味わいながら食べます。噛んでいるときは箸を置き、食べ物が口の中にあるときは飲み物を取らず、口の中の物を飲み込んでから次の物を口に入れましょう。

 30分間は食事に専念できる時間を取り、食物繊維が豊富な野菜を多く使いましょう。食材は大きめに切って、一度に口に入れる量は減らします。なるべく食べ応えのある食材を使い、できれば白米ではなく玄米にすると良いでしょう。

 健康管理のためには自分の正常値を知っておくことが非常に大切で、かかりつけ医を持ちずっとデータを残しておくことが大事だと思います。

 健康は積極的に取りに行く時代になりました。ぜひ健康な状態を記録に残しておきましょう。検査結果があればあるほど、大きな資料になります。かかりつけ医であれば平熱が低い人と高い人では見方も変わります。それが健康長寿につながります。こうした講演を通していろんな情報をお与えできればと思います。

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