本紙掲載日:2023-10-05
(7面)

薪能特集−第3回能楽講座

「延岡藩における神事能」と題して語る増田豪さん

延岡藩での様子や能道具を解説−学芸員の増田豪さん

◆町全体で担っていた神事能

 「第26回のべおか天下一薪能(てんがいちたきぎのう)」を前に、同市の市民協働まちづくりセンターで9月29日、第3回の能楽講座があった。NPO法人のべおか天下一市民交流機構(松下宏理事長)主催。

 講師は、同市歴史・文化都市推進課調査・研究・普及係長で学芸員の増田豪さん(48)。「延岡藩における神事能」と題し、内藤家文書を主に読み解き、神事能の様子や能道具などについて解説した。

 1600年代に本格的に始まった神事能は内藤家文書によると、現在の今山八幡宮と安賀多神社で1年置きに会場を移して開催されていた。しかし、別の古文書では開催しなかった年があり、開催しなかったことで藩内が乱れる恐れがあると記されていた。このような当時の神への深い信仰から、増田さんは「神事能は楽しむ芸能だけではなく、大事な行事として認識されていた。それを引き継ぐことは藩の大事な役割でもあった」と話した。

 使用されていた装束や面などの能道具は、延岡藩初代の高橋元種の時代に集められ、藩主がいつ代わるか分からないため町人が引き継いでいった。そのため、当時は町人が演目に必要な装束の虫干しをするなどの管理を行っていた。さらに、能には家来や町人が演者として出演していたことから、能は基本的に町全体で行われていたという。

 演者は江戸の家元で修行させるなどして育成し、延岡の町人に伝えていた記録も残っている。中には修行の延長を藩が支えたり、延岡に縁がある役者を雇ったりしていたことが書かれた史料もあり、「延岡の町全体でたくさんの役者が育ち神事能を担っていたことが延岡の神事能の大きな特徴」と増田さん。

 最後に「延岡だからこそ薪能はこれまで25回も続いてきた。大事な伝統を引き続き支えていただきたい」と呼び掛けた。

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