本紙掲載日:2023-10-09
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日之影の郷土芸能-大人歌舞伎

九州唯一の農村歌舞伎に喝采

 日之影町に伝わる郷土芸能「大人(おおひと)歌舞伎」の公演が8日、同町岩井川の大人歌舞伎の館であり、地元住民や家族連れらが詰め掛けた。主催は大人歌舞伎保存会(山本唯仁会長、約20人)。

 大人歌舞伎は、九州唯一の農村歌舞伎として1995年3月、県無形民俗文化財に指定された。安土桃山時代に岩井川地方一帯を善政で治めつつ非業の最期を遂げた武将・甲斐宗攝(そうせつ)の愛した芝居を農民が演じ、弔うことで広まったとされている。

 公演は春と秋の年2回。秋は地元の大人神社秋祭りに合わせた奉納演芸として行っている。

 保存会員による祝いの舞「寿三番叟(さんばそう)」の後、全員で社殿の方角に向かって2礼2拍手1礼し、プログラムへ移った。

 落語や舞踊を挟み、討たれた主君の妻に侮蔑され、袂(たもと)を分かちながらもあだ討ちを果たした赤穂浪士大石内蔵助を描く「元禄忠臣蔵『南部坂雪の別れ』」、摂津莵原(うはら)の里の林家を舞台に繰り広げられる源平合戦時代の物語「一谷嫩(ふたば)軍記流の枝『莵原の里林住家(すみか)の段』」を上演。来場者は堂々と立ち回る役者たちに熱い視線を送り、場面転換のたびに惜しみない拍手でたたえていた。

 友人の誘いで初めて鑑賞したという延岡市の林田弘嘉さん(68)は「神楽と違った魅力があって素晴らしいと感じました。後継者が少ないと聞いたので、この面白さを子どもにもっと知ってほしい」と感想。

 山本会長(71)は「見に来てくれる皆さんのおかげで素晴らしい舞台が成り立つと実感しています。年2回のうち1回は昔のように大人神社の境内で演じたいと考えているので、伝統芸能の継承という意味でも研さんを続けたい」と話した。

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