本紙掲載日:2023-10-10
(2面)

殺到する負傷者−現場対応を確認

大規模地震時医療活動訓練

◆災害拠点病院、医師・DMATが処置

 南海トラフ巨大地震を想定した県の「大規模地震時医療活動訓練」が9月30日、県庁を中心に県内各会場をつないで行われた。県や市町村、災害拠点病院、災害派遣医療チーム(DMAT)、消防、自衛隊など県内から約300人、県外から200人程度が参加し、被災後のスムーズな支援と受援に向けた連携を確認した。

◇発生から2日目を想定

 前日の午前11時に県内で震度7(最大級)の地震が発生して2日目を迎えたとの想定で、県庁内にはDMATや支援物資の要請に対応する調整本部が開設。道路などのインフラ、電力やガス・水道などライフラインの被災状況の確認作業などが急ピッチで進められた。

 このうち延岡市では、主に災害医療の現場対応を訓練。後方支援拠点となる九州保健福祉大学(吉野町)はグラウンドにヘリポートを確保し、本州から熊本を経由して陸上自衛隊の輸送ヘリで降り立ったDMAT隊員らが、県立延岡病院(県病院)に集結した。

 同じく災害拠点病院の延岡共立病院(山月町)は、負傷者の受け入れを訓練。マスクとゴーグル、手袋、防護ガウンを身に着けた医師は、次々と病院に駆け込んだり、運び込まれたりする傷病者を短い時間で診察し、治療の優先順位を決めるトリアージで処置を振り分けた。

 院内の対策本部は外来患者や病院スタッフの安否、電力停止でエレベーターや医療機器が使用できないといった被害状況、受け入れた傷病者ごとの処置状況などを把握し、インフラ事業者や県病院のDMAT本部に必要な支援を要請。大規模災害の被災地で経験を積んだ指導役のDMAT隊員が、訓練を間近で見守りながら気になった点をアドバイスした。

 隊員は、通園バス横転事故の現場で、けがの大きさを色分けで伝達するトリアージタッグ(カード)の札を園児たちが手でちぎった経験から、「どの色(負傷程度)か分かるように記入もしておくように」と助言。入院患者の病床や入院などの調整も、担当者を決めておくよう求めた。

 重傷者が運び込まれると、駆け付けた別のDMATが中心となって処置。時間経過とともに患者の容体が悪化し、意識レベルが低下する緊迫した状況が続く中、現場を担う赤須郁太郎医師(理事長)が対策本部を通して県病院に受け入れ要請するまでを訓練した。

◇大規模災害でも病院機能を維持

 延岡共立病院(当時、中川原町)は2006年に市内を襲った竜巻災害で、殺到する負傷者に対応。そうした経験を含め、20年に現在の高台に新築移転した現病院は、耐震構造やヘリポート設置をはじめ、災害拠点病院としての機能を重視した造りとなっている。

 1階フロアはできるだけ多くの負傷者を受け入れできるよう、メディカルストリート構想を採用。待合ロビーは広間にできるよう、床に固定せず持ち運び可能な長椅子を設置し、余裕を持って傷病者を搬送できるよう広い通路や緊急医療用の動線を確保した。

 ライフラインも1階は独立させ、プロパンガスで発電するシステムを導入しているほか、十分な水も貯蔵。大規模災害が発生しても最低72時間は通常通りの機能を維持できるという。

 また、院内にもDMATを編成。今回は移転後初の大規模訓練となり、赤須院長は「いつ、何が起きるか分からない。旧病院よりも多くの人数を受け入れられるようになったので、訓練を通して現病院の動線を確認し、高次医療機関へのヘリ移送も検証したい」。赤須理事長も「訓練がいざというときに役立つ。怠ることなく反省しながら、対策を煮詰めていきたい」と話した。

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