本紙掲載日:2023-10-12
(1面)

県域JA、来年4月発足-県北3JA組合長に聞く(下)

JA高千穂・佐藤友則組合長-未来へ今からスタート

--農業協同組合(JA)は、長い歴史の中で合併を重ね、地域的に統合されてきた組織です。県域JA構想はその大きな区切りになると思います。


中山間地域は特に、少子高齢化、過疎化、担い手不足、そして農業従事者の高齢化が顕著です。西臼杵郡では1994年に高千穂、日之影、五ケ瀬町のJAが合併して「JA高千穂地区」となりましたが、その背景にあったのは、将来的な単協での安定運営に陰りが見え始めたということでした。
農業就業人口の減少に伴う生産量縮小といった内的要因に、近年のコロナ禍やロシアウクライナ情勢といった外的要因が重なると個々の力では対処しきれない。
遅かれ早かれ県内13JAが同じ問題に行き着くだろうと、6年前に高千穂地区を含む一部地域のJA間で持ち上がったのが県域JA構想です。
しばらくは内外に向けた激変緩和に追われるでしょうが、94年の経験も踏まえて前向きに捉えています。

--組合員への説明はいつごろから?その間の反応はどうでしたか。

組織整備委員会の中で構想を練り、今年8月2日に理事会の承認を得た議案をもって組合員へ真意を問うことになりました。その段階から支所ごとに説明会を開いたのですが、意見交換自体は構想が持ち上がった6年前から行っていました。
「大きな波にのまれるんじゃないか」とか「地域で大切に守ってきたインフラが脅かされるのではないか」という不安の声もありましたが、心配することはないと言い続けてきました。
〃おらが農協〃とでも言いますか、長い歴史の中で受け継がれてきた中山間地域ならではの、古き良き部分は責任を持って守ると公言し、未来を託していただいたように感じています。

◆地域と県域をマッチング

--組合員(准組合員含む)や消費者へのメリットは。

県域JAは組合員(准組合員含む)約15万人、総資産約1兆2千億円、職員総数約4700人の巨大な組織になりますので、スケールメリットの恩恵が強化される点は心強いです。
大量一括購入による経費削減や、外的要因に対する対処力の充填(じゅうてん)、組合や農畜産物の信頼性向上などさまざまなメリットがあると期待しています。

--組織風土の違いや待遇など課題もあると思います。

当面は、地域と県域をうまくマッチングさせるため、地域根性がマイナスに作用しないよう奔走することになると思います。ただ、組合として不変で最も大切なことは、いかにサービスを低下させずに地域インフラを維持させるかということです。
現段階で考え得る問題はいずれも時間とともに是正していくと考えていますが、県域の中にあって持続可能な農業運営体制を確立し、あらゆる事態に備えて盤石化しておくことが求められます。

◆高品質な農畜産物に自信

--JA高千穂地区としては、どのような特色を打ち出していきますか。

「民、牛を愛し、牛また民を愛す」との言葉が受け継がれているほど牛と近しい地域なので、まずは「高千穂牛ブランド」を打ち出したい。
昨年10月に開催された全国和牛能力共進会では、県勢22頭のうち9頭が高千穂地区から輩出された牛でした。そこには7区(肉牛の部)で内閣総理大臣賞を獲得した牛も含まれます。
宮崎牛の中でも不飽和脂肪酸が多く、とろけるような舌触りが高千穂牛の特徴。そうしたオリジナリティーを打ち出すことで、低迷する子牛の価格向上につなげたいと考えています。
管内にはほかにも、生産量日本一を誇る釜炒(い)り茶や、全国的に評価が高いラナンキュラス、くりきんとん発祥の地とされる岐阜県の銘店とも取引があるクリなど、高品質な農畜産物が多いです。それぞれの付加価値を上手にPRすることで生産農家をサポートします。

--そのほか、考えがありましたら聞かせてください。

夢ではなく、現実と向き合わないといけないのがJAだと思います。あらゆる選択肢から最善を判断し、行政にお願いするという姿勢を持たないと、受け身では立ち行かなくなってしまう。よって、組織が大きくなり、選択の幅が広がることには意義があると感じています。
今からがスタートです。始まってみないと分からない部分もありますが、将来、地域の方々が「あの時に合併していて良かった」と思えるよう力を尽くします。

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