本紙掲載日:2023-10-14
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第1回のべおか里山塾が開講

鳥獣被害対策について学んだ第1回のべおか里山塾(北川町川坂)
くくりわなや電気やりなどの使い方も実演された

野生鳥獣対策−わなの設置方法など学ぶ

 野生鳥獣による農林産物の食害が深刻化する中、シカやイノシシを人里に近づけない方法を身に付け、新規就農者や移住者の確保につなげる「第1回のべおか里山塾」が6から8日、延岡市の北川町や北浦町などであり、県内外からの参加者が実践的に学んだ。

◆冬場の餌は栄養豊富な農林産物

 延岡市が主催し、初日の6日は約50人が受講した。北川町の川坂母子健康センターで開講式の後に鳥獣対策講座があり、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構畜産研究部門の竹内正彦・動物行動管理研究領域長が、イノシシの生態や習性などを中心に対策の基礎知識について話した。

 竹内さんは、食物条件の厳しい冬場に栄養豊富な農林産物が餌となり、生存や出産がしやすくなったことで野生鳥獣が増え続けていると指摘。柿や栗など放置果樹や未収穫の農作物などが餌になることを地域で学び、それらの除去や柵設置などの対策に取り組むよう訴えた。

◆侵入してくるシカだけを追い払う

 また、ヒグマやエゾシカなどを中心に50年の狩猟歴を持つ有害鳥獣駆除のエキスパートで、年間約3千万円だった北海道岩見沢市の農業被害額を10年で解消した農林水産省農作物野生鳥獣被害対策アドバイザーの原田勝男さんが、「くくりわな」の技能講習やシカの駆除方法を指導した。

 原田さんは、シカは臆病で1頭捕獲されると群れが危険を認識して近づかなくなるとし、「田畑の境界に近い山側にわなを仕掛け、侵入してくるシカだけを追い払えばいい」と説明。

 踏み込むと作動する「脚くくり型わな」の実物を示し、シカの視線をそらす設置方法や、獣道に木の枝を置いて右前脚で踏み込む誘導術などを指南した。

 原田さんと同じ農水省アドバイザーで、狩猟文化研究所の田口洋美代表(東北芸術工科大学名誉教授)が野生鳥獣とのゾーニング(すみ分け)、北海道大学大学院の池田透教授がわななどの物理的手法や化学薬剤、天敵動物を使った鳥獣の防除法を紹介した。

 7、8日は北川町でわなの仕掛け方法を学ぶ現地研修や野菜の収穫体験、北浦町で水田除草ロボットの操作研修、島浦町でクルージングや養殖場見学などを行い、延岡の農林水産を学習。今後も第2回を11月10〜12日、第3回を来年1月26〜28日、第4回を同3月22〜24日に予定している。

◆「原因が分かり勉強になった」

 北川町長井で自伐型林業に取り組む同市の早麑聖劼気鵝複毅供砲蓮⊃⊆したヤマザクラがシカの食害に遭ったり、林道がイノシシに荒らされる被害などに頭を抱えて受講。「イノシシが地面を掘り返すのはミミズが好物だからと思っていたが、クズなどの根を探しているのが原因と分かり、勉強になった」と感想。

 将来は妻の故郷の延岡に移住を考えているという東京在住の自営業北上文雄さん(53)は、「これほど鳥獣被害が出ているとは知らず、いろいろな話が聞けて勉強になった。移住するとしたら、農業も選択肢の一つに考えたい」と話した。

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