本紙掲載日:2023-10-25
(7面)

一緒に脱穀など体験、交流

登山家の野口健さんがサプライズ訪問−高千穂・田原小

 世界的アルピニストの野口健さん(50)が23日、高千穂町立田原小学校(篠原光教校長、30人)をサプライズ訪問し、脱穀体験や質疑応答を通じて全校児童と交流した。

 世界農業遺産(GIAHS)である高千穂郷・椎葉山地域の知名度向上とファンづくりを目的に、同地域活性化協議会(会長・甲斐宗之高千穂町長)が企画。野口さんは3月に同協議会からGIAHSアンバサダー(PR大使)の委嘱を受けており、「現地の子どもたちと農業体験をしたい」という本人の意向もあって初めて実現した。

 体育館に集まった児童はまず、5月に手植えした「おてんとそだち」の脱穀に関する説明を受けた。その最中、前振りされた野口さんがにこやかに登場すると、事前に教諭らからゲストの活躍を学びつつも訪問を知らされていなかった児童から歓声と拍手が湧いた。

 体験は、牛乳パックを使った脱穀▽すり鉢とソフトボールを使ったもみすり▽吐息によるもみ殻と米の分別▽空き瓶と棒を使った精米――。

 「私にとって初めての体験なので、きょうは皆さんにたくさん教えてもらいたいと思っています」などとあいさつした野口さんは、複数に分かれたグループを巡回しながら一緒に取り組んだ。

 「稲はいつごろ植えたの?」「乾燥させるまでにはどれくらいかかったの?」といった会話を交え、一段と労力を要するもみすりや精米に助力。こつがいる脱穀や吐息による分別は、授業で毎年体験しているという児童に教わって実践した。

 3年生の戸睛人さん(8)は「有名人と一緒に取り組むというめったにできない経験ができてすごいなと思った。できたお米は、地域のことを考えながらおいしく食べたい」とにっこり。

 野口さんは「地元の子どもたちにとっては当たり前の景色なので、実体験がないと素晴らしさに気付きにくい。地域内外の大人との活動を通じて実感を残し、それが郷土愛を育むきっかけになればうれしい」と話した。

 体験後は輪になって座り、登山や自然保護などに関するフリートークで交流を深めた。

 また、翌24日には諸塚村立諸塚小学校を訪ね、落ち葉拾いや火おこし体験を楽しんだ。

 世界農業遺産は、社会や環境に適応しながら継承されてきた独自性のある農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、農業生物多様性などが一体となった、世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域。高千穂郷・椎葉山地域は、厳しい環境下で生まれた特徴的な「山間地農林業複合システム」が評価され、2015年に認定を受けた。

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