本紙掲載日:2023-11-15
(6面)

わがまちのオーケストラ、これからも

延岡フィル第20回記念定演−ゆかりの音楽家しのぶ

 延岡フィルハーモニー管弦楽団(=延フィル、北林鉄平代表、団員40人)の「第20回記念定期演奏会〜ゆかりの音楽家を偲(しの)んで〜」は12日、延岡市の延岡総合文化センター大ホールであった。2021年12月に亡くなった音楽監督の椛山達己さんと、同年10月に亡くなった弦楽器トレーナーの稲田竜斗さん(バイオリニスト)をしのび、叙情あふれる美しい音楽を届けた。聞き入った約700人の観客の思いも重なり、会場は優しさ、温かさに包まれた。

 ワーグナー作曲の楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲、ラフマニノフ作曲のピアノ協奏曲第2番、ブラームス作曲の交響曲第2番を演奏。

 指揮を務めた末廣誠さん(64)=鹿児島出身、東京都在住=はこれまでに延フィルの第5、7、17回定期演奏会などに客演し、椛山さんの親しい友人でもあった。

 事前インタビューで「冷たく受け取られてしまうかもしれないが、悲しみを抱えては演奏できない。しんどかろうが、やれることを精いっぱい努力して、聴く人の胸に響く音楽を演奏する。それが僕の仕事」と語っていた末廣さん。

 その言葉通り、厳しく的確な指導で団員たちを鼓舞。本番では、力強くオーケストラを引っ張った。

 また、ピアノ協奏曲第2番では竜斗さんの妻でピアニストの稲田由香里さん(44)=高鍋町在住=がソリストを務め、心揺さぶる音色で魅了した。

 舞台袖には竜斗さんのバイオリンが、ステージ上には指揮をする椛山さんの人形が置かれ、それぞれ見守った。

 交響曲第2番の演奏前には椛山さん、竜斗さんと共に、今月2日に31歳で急逝した同市出身の指揮者、山脇幸人さんを追悼した。山脇さんは椛山さんのまな弟子で、延フィルとも数回共演。国内外のプロオーケストラを指揮し活躍していた。

 指揮者、ソリスト、団員、観客それぞれに、さまざまな思いが交錯する中での今回の演奏会。終演後、観客からは「ブラボー」の声が送られ、カーテンコールが何度も続いた。

 妻、娘と来場した高千穂町の佐藤弘一さん(51)は「普段クラシック音楽に触れる機会はあまりありませんが、生の迫力に感動しました。本当にすばらしい演奏でした」。

 夫、息子と来場した延岡市の小泉小織さん(44)は「4カ月前に東京から引っ越してきたばかりで、プログラムに引かれて初めて聴きに来ました。鳴りやまないカーテンコールに驚きました。オーケストラと市民の距離がとても近く、地域に愛されているオーケストラなんだと感じました」。

 北林代表(70)は「共に音をつくり上げてきた仲間の存在は、いつまでも心の中にあります。これからも『わがまちのオーケストラ』として良い音楽を届けていけたら」と話した。

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