本紙掲載日:2023-11-24
(3面)

埋もれた歴史を掘り起こす

延岡史談会公開講演会で話す工藤寛さん

工藤寛さん延岡史談会で講演

◆故郷高千穂の史実を語る

 延岡史談会(甲斐典明会長)主催の第4回公開講演会は19日、延岡市社会教育センターで開かれた。講師は、宮崎市在住の獣医師の工藤寛さん。「故郷の山に埋もれた歴史を掘り起こす」をテーマに話した。

 工藤さんは1953年、高千穂町生まれ。高千穂高、麻布獣医科大(現麻布大)卒。77年から2013年まで県職員として主に家畜衛生業務に従事した。

 著書は「名利無縁」(鉱脈社刊)、「ラストフライト〜奥高千穂、隼・B―29墜落秘話」(同)などがある。

◇B―29と隼の墜落秘話

 講演では、1987年初秋に生息を信じていた九州のツキノワグマの生息痕を探し歩いていた高千穂町の親父山で、一片の精巧な金属片を発見。調べた結果、終戦直後の45年8月30日に墜落した米軍の大型爆撃機「B―29」の部品と分かった。また同月、高千穂町の山奥に日本の戦闘機「隼」が墜落していたことも分かった経緯を話した。

 当時、地元の古老たちの話を聞くことはできたが、公式な記録がなく真実が分からなかった。そこで、アメリカの関係機関や厚生省(現厚生労働省)に問い合わせや詳しい資料の提供を求めるなどして全容を把握。日米の遺族を招くなどして戦後50年目の95年から始めた慰霊祭は、27回目を数えることなどを紹介した。

 工藤さんは、このB―29墜落事故を調べる中で、米空軍歴史研究センターから入手した墜落事故報告書に何度も登場する高千穂町の女性「興梠千穂」に注目。

 墜落事故を機に、進駐軍と深い接点を築いた彼女の波瀾(はらん)万丈の人生や、終戦前後の混乱期をたくましく生き抜いた生涯を話した。

◇気骨ある先人たち

 最後は、「世界農業遺産の山腹用水路を開削した気骨の先人と3人の庄屋の話」をテーマに話した。

 地域を水田で豊かに潤わせるため、機械のない当時、用水路の岩肌を手作業で掘り進めた功績などに触れ、「信念があったし、村の人を付いてこさせるだけの信用もあったと思う」などと先人たちをたたえた。

 工藤さんは「いずれも気骨のある先人たちは財を求めず、今は墓がどこにあるかも分からない。世話する人や末裔(まつえい)が住んでいるわけでもないので、たどりようがないが、私がその一翼を担えればと思っている。これからも掘り起こして書いて残していきたい」などと話していた。

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