本紙掲載日:2023-11-29
(1面)

デジタル産業集積へ

デジタル産業の集積を進める戦略協議会の第2回会議

時流を見据え戦略を協議−延岡市

 デジタル産業の集積を進める延岡市の戦略協議会は20日、延岡市役所で第2回会議を開き、専門家の講演も交えながら将来の可能性を模索した。
国の半導体・デジタル産業戦略を踏まえ、半導体受託製造の世界最大手であるTSMC(台湾積体電路製造)の熊本県進出や、製造業の国内回帰、円安などの潮流を捉えながら、延岡の企業集積や的確な人材育成をいかに進めるべきかを協議。

 地元の延岡商工会議所や市キャリア教育支援センター、県工業会県北支部をはじめ、日立総合計画研究所、富士フィルム、東京理科大学大学院、九州経済産業局、九州総合通信局、慶應義塾大学など幅広い機関から、高度な知見を持つ外部有識者が参画している。

 今回は東京理科大学大学院の若林秀樹教授(経営学研究科技術経営)から世界の半導体業界の現状、米中摩擦や円安の影響などについて説明を受け、市内を拠点とする旭有機材や興電舎、三井化学EMS、中園工業所も加わり意見交換した。

 若林教授は半導体製造が企業間競争から国家間競争に移っているとして、国力を高めるため情報通信網の集積やデジタルトランスフォーメーションなどによる「50年ぶりの列島改造」を実現しなければならないと強調。

 二酸化炭素排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルや、地理情報の防災や救命面への活用など、さまざまな社会課題の解決にデジタル実装を急ぐよう提言した。

 その中で台湾有事が起きれば「TSMCをはじめとする100兆円規模の市場が消える可能性がある」と指摘。九州は台湾と気候も地理的にも似ていながら、交流がない都市が多くあり「有事が起きる前に関係を構築すれば台湾企業のデータを補完できる余地は大きい」と語った。

 その上で旭化成データセンターは強みとなり、延岡市が高い技術を有する都市であることをアピールしていくようアドバイス。世界のメーカーが新たな技術の発掘に力を入れており、地場企業の技術が日の目を見るチャンスもあるとして、積極的に売り込んでいくよう勧めた。

 読谷山洋司市長は延岡市が強みとする化学と材料の分野で、旭化成の製造拠点がある台南市の国立専門大学付属工業高校と人材交流しており、近く市職員が訪問する予定であることを説明。「世界の半導体産業と延岡がつながる形をつくっていく」と語った。

 また、業界では延岡工業高校の卒業生の引き合いが強いことから、女性が多く活躍している化学分野を中心に高等専門学校へと高度化させたい考えも示し、出生数や働き手世代が増加している延岡市の吉兆を「さらにしっかりとした流れにして、日本全体の産業強化にもつなげていきたい」と力を込めた。

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