本紙掲載日:2024-01-23
(3面)

「患者さんの最適な選択肢へ」

在宅医療の現状などを説明する岩谷医師

岩谷医師(縁・在宅クリニック)が講演

◆在宅医療への理解深める−県立延岡病院の医師、看護師ら

 在宅医療への理解を深める研修会が19日、延岡市の県立延岡病院であり、同病院の医師や看護師ら約140人が参加した。延岡市で在宅医療に取り組む岩谷健志医師(36)=縁(えん)・在宅クリニック院長=が講演し、地域の現状や課題を説明した。

 同クリニックは、市内初となる在宅医療専門の診療所として2022年7月に開院。24時間365日態勢で対応し、毎月160〜180人の患者を診療している。

 そんな中、昨年は1年間で91人を自宅でみとり、自宅でのみとりの数は県内トップ、九州でもトップクラスの実績となっている。

 これについて岩谷医師は「クリニックの頑張りではなく、在宅医療につなぎ支えてくれる延岡市の多職種連携の強さを表している」と強調。症例の豊富さ、医療福祉機能のポテンシャルの高さから「教育フィールドとしての地域の可能性を感じている」と語った。

 この日は自宅でのみとりに焦点を当て、AYA(アヤ)世代や医療的ケア児を含め、さまざまな患者について実例を示し、地域の課題を検討した。

 在宅医療の利用サービスや医療費負担は患者の年齢、日常生活動作、医療処置、居住場所などによって変わる。ただ、医療者の間でも在宅医療の仕組みは、あまり理解されていないのが現状という。

 岩谷医師は「仕組みを知っているだけで患者さんのその後の人生や療養は変わってくる。最適な選択肢につなげられる」と理解を求めた。

 また、同クリニックでは患者をみとった後、忌明けなどのタイミングで再度、自宅を訪問し、家族の悲しみに寄り添っている。「私たち医療者にとっても心救われる大事な時間になっている」という。

 示された現場の写真やエピソードには、悲しみの中にも、患者を囲む家族や医療者の温かな思いがあふれており、思わず目頭を押さえる参加者の姿もあった。

 岩谷医師は他にも、人生の最終段階について考える人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)を住民を対象に開くなど、地域への発信も続けている。

 講演後、参加者からは、その人らしさをかなえる選択肢の一つとして「地域みんなで頑張っていきたい」など、岩谷医師らスタッフの思いに共感する声とともに、その取り組みに称賛の拍手が送られた。

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