本紙掲載日:2024-02-13
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伝統の火祭り「歳頂火」−熊野神社

火柱に健康や家内安全などを願った熊野神社の歳頂火
境内は火で餅を焼く参拝者らでにぎわった

燃え上がる炎に祈り−延岡市須佐町

 1300年以上の伝統があるとされる延岡市須佐町の火祭り「歳頂火(せとき)」が11日、地元の熊野神社(玉置重徳宮司)であった。燃え上がる炎で熱気に包まれた境内は多くの参拝客でにぎわった。

 歳頂火は、古来から伝わるろくろ式の道具の摩擦で火を起こす火きり神事で開幕。砕木からろうそくに移された「御神火」がゆっくりとあんどんで神苑まで運ばれ、地元の人たちによって組み上げられた高さ約2メートルのご神木の土台「やま」へと着火された。

 火はパチパチと音を立てながら瞬く間に燃え上がり、すぐに鳥居の高さを優に越える火柱へ。参拝者は家に飾り付けていたしめ縄や破魔矢などを投げ入れ、長い竹の先に刺した餅をあぶって食べるなどして一年の健康と家内安全などを願った。

 今年は、地域を歩きながら、ふるさとの伝統文化に触れる東海地区青少年育成連絡協議会(甲斐久敏会長)の「東海再発見ウォーク」の参加者も見学。川島小、港小、東海東小、東海小、東海中の児童生徒やその家族ら約100人も餅焼きに加わり、境内は多くの子どもたちの歓声に包まれていた。

 川島小の河野ひかりさん(11)と牧野楓大さん(11)は「炎が思っていたよりも大きくて焦ったけど、餅を焼くのがめちゃくちゃ楽しかった。来年もまた来たい」と笑顔。同協議会の甲斐会長は「近くの地域の文化を知る機会は意外に少ない。いにしえから続く火起こしの神事も間近で見ることができて、子どもだけでなく、大人の自分たちにとっても良い勉強になった」と振り返った。

 歳頂火は奈良時代、この地に住み着いた修験者一行が伝えたとされる伝統行事。旧暦の小正月(1月15日)に合わせて戦時中も欠かさず継続されており、コロナ禍でも時間帯を昼間に変更したり、規模を縮小したりするなどして地域の人たちによって大切に受け継がれている。

 玉置宮司(92)は「1300年以上続いている祭りがあることは、須佐町にとっての誇りでもある。『絶対に絶やさない』という気持ちは、住民共通の願い」と話していた。

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