本紙掲載日:2024-06-25
(3面)

デイリー健康大学延岡会場(中)

各がん検診のメリット、デメリットについて丁寧に解説

「がん検診について」板野内科・胃腸科医院・板野晋也医師

◆大腸がん検診・便潜血検査は安全−毎年受診で死亡率33%減

 胃がんリスク検診は、胃がんになりやすい体質か、なりにくい体質かを確かめる検査です(延岡市では市胃がんリスク検査受診券が届いた人が対象、過去一度でも受診した人は対象外)。

 具体的には「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」と「ペプシノゲン検査」という2種類の血液検査を行います。胃がんの原因となるピロリ菌感染と胃の老化具合を同時に調べ、A〜D群の4段階で判定していきます。

 このうちA群は、ピロリ菌に感染していない若い胃、ということで胃がんのリスクはほとんどありません。B群以降は全てピロリ菌に感染していて、B、C、Dの順で老化が進んでいる、ということになります。

 認定NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構によると、胃がんの発見率はB群で1000人に1人、C群で500人に1人、D群で80人に1人程度と言われています。

 ただ、注意してほしいのは、リスク検診はあくまで「がんになりやすい体質かどうか」を確かめる検査であって、「がんを見つけるため」の検査ではないので、仮に「低リスク」と判定されても、完全に胃がんのリスクが無くなるわけではありません。

 やはり、定期的に胃内視鏡検診などを受けていただくことが、大事になってくるかと思います。

 大腸がん検診は「便潜血検査」を行います。2日分の便を採取して、便に混じった血液を検出。大腸がんやその他の大腸疾患を患うと、目に見えない程度の微量な出血をすることがあるので、それを確かめます(延岡市では40歳以上が対象、受診間隔は1年に1回を推奨)。

 この検診のメリットは、なんといっても「偶発症」が無いこと。先ほど紹介した胃がんリスク検診ですが、採血検査も橈骨(とうこつ)神経という手に走っている神経を注射針で傷つけてしまい、しびれが出たり、動きにくくなったりと、ある一定の確率で偶発症は起きます。

 しかし、この大腸がん検診・便潜血検査は、自分が出した大便を摂取して、それを検査に回すだけですから、人体に何も危害を加えない、とても安全な素晴らしい検査だと思います。

 また、便潜血検査を毎年受診した場合には33%、2年に1度受診しただけでも13%から21%、大腸がんの死亡率が減少したという報告もあります。

 ある一定の年齢に達してから大腸がん検診を受けるのは、とてもメリットが大きいです。

 デメリットがあるとすれば、「偽陰性」といって、がんではないのに精密検査に回されてしまうこと。また、逆に「偽陽性」といって、本当はがんなのに、がんではないと診断されてしまった時に伴う精神的な苦痛です。

 あとは、仮にがんを疑う所見が見つかった場合、先端にカメラが付いたチューブを肛門から挿入する「大腸カメラ」という、皆さんあまりやりたがらない精密検査を受けることになるので、そのあたりの苦痛もデメリットにはなるかと思います。

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