本紙掲載日:2024-08-23
(3面)

デイリー健康大学延岡会場(下)

受講者から質問のに答える塩川副院長

「中高年の肩関節痛について」あたご整形外科・塩川徳副院長

◆反転型人工肩関節が有用−手術適用に専門医の判断必要

 高年(60代〜80歳以上)になりますと、「変形性肩関節症」の発生率が増えます。変形性肩関節症は主に仝業性変形性肩関節症と∝板(けんばん)断裂性肩関節症の二つがあります。,脇霍の変性や摩耗、靱帯(じんたい)や骨等の組織の老化が原因とされ、高血圧も危険因子の一つとの報告があります。△聾腱板が断裂(損傷)したままの経過で生じる関節症です。

 ,這板機能が保たれている場合は、通常型人工肩関節置換術で除痛と機能の改善効果が期待できるのですが、△亡悗靴討蓮△海譴泙任猟名鏃真郵肩関節置換術では不十分な治療成績でした。

 しかし、2014年から反転型人工肩関節置換術が日本でも認可され、認可後の10年で日本人症例の治療成績データが蓄積され、手術方法も改良されたことで、通常型人工肩関節置換術では対処できなかった症例にも反転型人工肩関節が有用となりました。

 外傷(けが)については、「肩関節脱臼」と「上腕骨近位端骨折」について紹介します。「肩関節脱臼」は、ほとんどが前下方に脱臼を生じます。高齢者は骨がもろいため、強く引っぱったり、ねじったりするだけで容易に骨が折れてしまいます。そのため、脱臼の整復は慎重な対処が必要です。

 「上腕骨近位端骨折」は骨粗しょう症骨折であり、増加傾向です。つえ歩行や歩行器歩行状態の高齢者にとっては、肩関節での歩行支持に影響する上腕骨近位端部の骨折は「3本目の脚」である上腕骨の機能が低下してしまい、生活動作に影響します。

 骨折がひどい場合には手術が必要ですが、骨粗しょう症の強い高齢者は、時に上腕骨近位部の粉砕状骨折を生じる場合があり、骨折手術では対処できないことがあります。

 さらに高齢者は腱板損傷により肩関節の機能低下が生じている状態で骨折してしまうため、反転型人工肩関節手術の有用性が報告されています。

 最後に反転型肩関節置換術について説明します。反転型肩人工関節置換手術は、本来の肩関節の構造とは逆の、上腕骨側が凹で肩甲骨側が球状の構造をした人工肩関節です。この手術は学会から認可を受けた専門医のみ執刀可能であり、県内では現在6〜7人の医師が認可され、県北地区では1人が認可を受けています。

 反転型人工肩関節置換は三角筋(肩関節を覆っている筋肉)の機能が重要で、術後約3カ月で頭まで届く程度に挙上できるようになります。耐用年数は15〜20年程度とされており、学会基準では「活動性のあまり高くない高齢者に適応すべき」とされています。手術適応については専門医の判断が必要ですので、ご相談いただければと思います。

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