地域に支えられ１０年

農家レストラン味さと−美郷町北郷の小黒木地区

◆薄味の田舎料理にこだわり−四季折々の食材で

　四季折々の食材をふんだんに使った〃田舎料理〃を提供する美郷町北郷小黒木の農家レストラン「味（み）さと」が、常連客や地元の人に支えられ開業１０年目を迎えた。「ここまで続けられたのは、地域の皆さんのおかげ」と運営する小黒木集落活性化協議会の阿部ひとみ代表（６７）。「地域のためにまだまだ頑張ります」とますます意気盛ん。

　「高齢化が進む地域を活性化させたい」という思いで２０１１年２月１１日、町の補助などで開業。阿部さん自身、農業から転身し、１８０度違う〃お客さん相手〃の生活が始まった。

　「お客さんが来てくれるか。そして、田舎料理が受け入れられるか。不安ばかり。３、４年持てばいいという思いでした」と開業当初を振り返る。

　案の定、道のりは険しかった。「薄味はいいけど、料理の種類が少ない」。覚悟していたとはいえ、厳しい言葉が相次ぐ、ある意味予想通りのスタートだった。「場所が分かりづらい」という苦情や「メニューが少ない」など厳しい声には、道々に看板を立てたり、地取れの山菜を使ったメニューを増やすなどして客の要望に応えた。

　味もメニューも少しずつ改善され、「人生の楽園」などテレビ番組や新聞で紹介されたことや田舎回帰ブームに乗って、一時は年間３０００人が訪れる人気ぶり。

　しかし、農家レストランの経営を維持するのは並大抵ではなかった。各地に田舎料理を提供するレストランが相次ぎ、サバイバル競争は激化するばかり。味さともしかり。ここ数年は開業当初ほどの客の入りは見込めず、往時の３分の１程度。熊本、大分、福岡など遠方から訪れる客や県内から訪れるリピーターら常連客が支えだ。

　客足が遠のいた時、「うどんなどの軽食や他の料理も出してみたら…」というアドバイスもあったが、スタンスを変えることなく、かたくなに田舎料理にこだわった。「開業当初に比べれば、お客さんは減りましたが、何とか生き延びています。これからも、自然の素材を使った田舎料理を提供したい。最近は若いお客さんが増えたので、若い人に楽しんでもらえるメニューも考えたい」と張り切る。

　メニューは、昼食１３００円（午前１１時３０分〜午後３時）▽小昼（おやつ）５００円（午後３〜５時）▽夕食２０００円（午後６〜９時）＝夕食は毎週金曜、土曜日のみ▽夜の宴会＝料理３０００円＋アルコールなどの飲料代。いずれも予約制で、毎週水曜が店休日。

　ちなみに、今の昼食メニューは、シイタケやこんにゃくなどの煮物、小アユの天ぷら、野菜のかき揚げ、ホウレンソウとコマツナのおひたし、白あえ、きんぴらなど。

　「春から夏にかけて、山菜が豊富になります。イタドリやタラの芽、ノビル、ワラビ…春の山菜料理を楽しんでください」と阿部代表。夕食はしし肉、鹿肉、アユの塩焼きなどジビエ料理も楽しめ、酒宴も受け付ける。


◆農家レストラン味さと◆

　延岡市内から車で２０〜２５分。五ケ瀬川右岸沿いの県道北方土々呂線を西に進み、北方ゴルフクラブ先の三差路を左折して県道北方北郷線へ。二つ目の黒木トンネルの手前を右折して峠道を下り小黒木の集落へ。三差路を左折してすぐ左に看板。予約、問い合わせ先は電話０９８２・６２・５６３０。