数少ない〃足の専門医〃－整形外科医の岡村龍さん

本紙掲載日：2020-09-05

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４月１日付で県立延岡病院から岡村病院に移った整形外科医の岡村龍さん

県立延岡病院から実家の病院へ

◆新たな環境で腕振るう

　整形外科医の岡村龍さん（４１）がこのほど、延岡市新小路の県立延岡病院から同市平原町の医療法人社団嘉祥会岡村病院（岡村博道理事長・院長）に移り、新たな環境の下、全国でも数が少ない〃足の専門医〃として腕を振るっている。

　岡村さんは２００３年、東京医科大学を卒業後、東京警察病院で１０年間勤務。同時期に「足関節の名医」として知られる原口直樹教授（現・聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院）に師事し、その後は宮崎大学付属病院や宮崎善仁会病院、県立延岡病院で整形外科医として活躍してきた。

　整形外科は、運動器官を構成する全組織が診療箇所となり、対象者も新生児から高齢者まですべての年齢層に及ぶ。その内容は多様で治療の必要な患者数は極めて多い。このうち、すねから下の足部・足関節を専門とする「足の外科」は発展の遅れから精通する医師の数が少ないのが現状で、「足関節は他の部位に比べて小さいことが特徴の一つ。適切な診断、治療がなされていないケースが見受けられることもある」（岡村さん）。

　例えば、レントゲン検査で足関節の診断、特に軟骨の摩耗の有無は立位（患者を立たせた状態）検査でないと正確に把握できないが、「こうした見識がまだ浸透しきっていない」という。

◇足関節の代表的疾患「変形性足関節症」

　表面を覆う軟骨がすり減った状態「変形性足関節症」は足関節の代表的な疾患の一つ。原因不明の場合もあるが、主に関節炎や骨折・捻挫などの外傷などによって発症する。骨と骨がぶつかることで特に歩行時の痛みが強く、進行すると足関節の内反や外反につながることも。病状の進行度は、正常のⅠ期から末期のⅣ期（軟骨が全体的に無くなっている状態）まで全５段階で示される。

　治療法は、靴の中敷きを用いた荷重調整や注射による保存療法と手術療法の二つに分けられる。このうち手術療法の主なものとしては、すねの骨を切って関節の傾きを矯正・固定する「下位脛骨骨切り術」、ボルトによる固定で高い安定性が得られる「足関節固定術」（症例によっては侵襲〈生体を傷つけること〉がより低い関節鏡使用の施術も可能）、可動域の温存が可能でリハビリをスムーズに行える「人工足関節全置換術」がある。

　変形が進んでいない場合は機能温存に有効な下位脛骨骨切り術、比較的変形が進んだ状態であれば足関節固定術および人工足関節全置換術が行われる。

　関節症もほかの疾病同様、早期の発見と治療が重要となる。また人工関節を用いる手術には、ライセンスが必要な場合も。岡村さんはライセンスを所持する数少ない医師の一人だが、それでも「『骨切り術』が行えるに越したことはない」と話す。ポイントは進行度５段階の中で、骨と骨との接触が一部で見られるⅢａ期と、より接触度の高いⅢｂ期。「Ⅲａ期までであれば骨切り術が可能な場合が多い」という。

◇どんな病気も早めの診療が肝心

　祖父から続く医師の家系にあって、「整形外科医になるのは自然な流れだった」と話す岡村さん。岡村病院は４年前に新築工事を終え、最新医療システムへの対応も可能になった。現在は父の博道院長と自身を含め医師８人態勢で４科目（整形外科、内科、皮膚科、リハビリテーション科）の診療を行っている。

　ＣＴ（コンピューター断層撮影装置）やＭＲＩ（磁気共鳴画像装置）、骨密度測定装置などを完備し、各病棟では無線ＬＡＮ、待合室では「Ｗｉ―Ｆｉ」の使用も可能。手頃な価格の個室料金（５５０～５５００円）と合わせて好評を得ている。

　また、新築時に感染症対策として熱発外来専用入り口も設置しており、新型コロナウイルス感染拡大当初から現在に至るまで、通院する市民に大きな安心感を与えている。

　岡村さんは「外反母趾（ぼし）や扁平（へんぺい）足はもちろん、捻挫や足の腫れが引かないなど少しでも気になることがあればいつでも気軽に来院してほしい。整形外科、内科、皮膚科いずれの病気でも早めの診療が肝心です」と呼び掛けている。

　岡村病院はＪＲ南延岡駅から南へ徒歩５分。診療時間は午前８時３０分から午後５時３０分。土曜は正午まで。日曜、祝日は休み。問い合わせは同病院（電話延岡２１・５３５３）。

【岡村さんのプロフィル】延岡市出身。延岡学園尚学館高等部、東京医科大学医学部医学科卒。２００３年、同年東京警察病院整形外科入局。その後、西東京警察病院整形外科や宮崎大学医学部付属病院整形外科教室、宮崎善仁会病院整形外科、県立延岡病院整形外科を経て今年４月に岡村病院へ。
現在、月・水曜は終日診療、火・木曜は午前の診療と午後の手術、金曜と第１、３、５土曜は半日診療を行っている。多忙な日々の中、毎週金曜の午後は３月まで勤務した県立延岡病院での研修にも精を出す。「医学は日々進歩しているので、勉強や情報交換は欠かせない。足関節分野の認知度向上にも一層取り組んでいきたい」