偉大な先輩しのぶ−延岡高校で「牧水忌」

同窓会が記念講演

◆校内短歌コンクール−甲斐愛奈さん最優秀賞

　日向市東郷町生まれの歌人、若山牧水が青春時代を過ごした旧制延岡中学校を前身とする県立延岡高校（川越勇二校長）で１６日、「牧水忌」が開かれた。牧水の命日９月１７日の前後に毎年開催。全校生徒７２１人が、校内牧水短歌コンクールの優秀作品や、同窓会（池上武博会長）が企画した記念講演に耳を傾け、母校の偉大な先輩をしのんだ。

　牧水忌と同窓会の記念講演を同時に行うのは今年が初めて。同窓会では例年、卒業生による記念講演を同校創立月の５月に行うが、新型コロナウイルスの影響で延期。学校と協議した結果、「卒業生の話を聞くことが良い経験になる」などの理由から牧水忌の一環に組み込まれた。

　まず、校内牧水短歌コンクールの表彰があり、優秀賞９首（各学年３首ずつ）と最優秀賞１首を紹介。最優秀賞には甲斐愛奈さん（３年）の「平仮名の擬態語はふわりと軽やかに文字の世界を明るく覆う」が選ばれた。

　甲斐さんは「朝井リョウさんの小説を読んでいる時に思い浮かんだ。うれしい」と笑顔。受賞者には全校生徒から惜しみない拍手が送られた。

　記念講演では、若山牧水延岡顕彰会長を務める飯干喬啓さん（延岡高１２回生）が登壇。「私の好きな牧水」というテーマで講演した。

　冒頭で、生涯９０００首の歌を詠んだとされる牧水の功績に触れ、「短歌の評価は読み手の感性で大きく変わる。くじけず作り続けることが大事」と、コンクールの選外となった生徒を気遣った。

　また、校内の歌碑にも刻まれている「うすべにに葉はいちはやく萌えいでて咲かむとすなり山桜花」について、同校在籍時に出会って強く共感し、牧水に引かれるきっかけになった歌と話した。

　卒業後は牧水と同じ早稲田大学に進んだ飯干さんは「牧水に出会っていなければ、全く違う人生を歩んでいたかもしれない。短歌には人の一生を左右するだけの力がある」と語った。

　聴講した山本陽大さん（２年）は「改めて牧水のすごさを認識した。校内の歌碑もしっかり見たい」と話していた。


◆優秀賞◆

１年押川愛茉
つりかわを持つ君の背にキュンとして背伸びしてまであこがれつかむ

１年甲斐倖志
おいコロナ毎日休まず働いていつになったら休日とるのか

１年郡山慧
夏を経て暑さの果てにたどり着く落ちるボールと上がる声援

２年菊池十輝
大丈夫もう大丈夫と夏空に叫んでみたいマスクをとって

２年末廣こころ
夏の朝少しはやめに家を出て君と話そう汗かわくまで

２年今山豊誠
燦燦（さんさん）と降り注ぎける陽（ひ）の光熱し鍛える我は鉄なり

３年田口和樹
あとふつか指折りかぞえるその日まで次こそ君の隣の席へ

３年長田凛太郎
単語帳君を見ながら覚えればいつしか想（おも）う君のことだけ

３年馬崎清香
ねえ君が、恋人できたと言ったとき自分は上手に笑えてましたか

◆最優秀賞◆
３年甲斐愛奈
平仮名（ひらがな）の擬態語はふわりと軽やかに文字の世界を明るく覆う