東京五輪柔道女子７０キロ級金・新井千鶴さん

延岡署で一日署長−点検や講話

　年末警戒に向けての士気高揚や女性職員へのエールを込め、延岡警察署（久留米英樹署長）は２６日、２０２０東京オリンピック柔道女子７０キロ級金メダリストの新井千鶴さん（２８）＝三井住友海上火災保険＝を招き、一日署長を委嘱した。

　久留米署長が三井住友宮崎支店の幹部と親交があった縁で話が進み、新井さんも快諾して実現。初めてという警察の制服をまとい、署長室で委嘱状を受け取った新井さんは早速、同署駐車場で通常点検の点検官を務め、指揮台の上から署員らの隊列動作を見守り、服装などを点検して回った。

　その後、庁舎講堂で「柔道から学んだもの」をテーマに講演。１９年に３連覇の懸かった世界選手権で３回戦敗退して柔道を諦めかけたことや、その後に代表入りが内定した東京五輪が１年延期となったことでの精神的負担など、「苦しいことの方が多かった」と金メダルまでの道のりを振り返った。

　東京五輪では家族やコーチ陣をはじめ、大会ボランティア、無観客でもテレビで応援してくれる人たちへ、「周りの方の言葉や支えがあったからこそ苦しい場面を乗り越えてこられた」と感謝。１６分４１秒に及ぶ死闘となった個人戦準決勝については、「責任を果たすため、力を出し切ることだけを考えて戦った」と当時の心境を語った。

　自分の兄も警察官という新井さんは、「皆さんはコロナ禍の中でも体を張って地域の安全を守ってくださっている」とたたえ、「苦しいことも多いですが頑張ってください」と激励。９月に現役引退を表明して現在は後進の育成に当たっており、「きょうの経験も今後に生かしていきたい」と笑顔を浮かべた。