コロナリポート−気持ち切り替え次へ

日向高校と延岡学園の吹奏楽部

◆九州総文祭、２週間前に中止が決まる−生徒らやりきれない思い
　椛山先生を追悼したかった…

　子どもたちの尊い時間がまた奪われた。長崎県で５、６日に開かれるはずだった第５回全九州高校総合文化祭が、コロナ禍で中止になった。出場予定だった延岡学園吹奏学部（山脇一美顧問、２４人）と日向高校吹奏楽部（園田玉紀、椎葉理恵顧問、１７人）の合同チームは、一時はやりきれない思いでいっぱいだったという。しかし、今は次の目標に向けて気持ちを切り替え、練習に励んでいる。

　中止が決まったのは本番の約２週間前。延岡学園の吉岡陸大部長は「楽しみにしていたのに。練習してきた時間が散ったようで悲しかった」、日向の瀬尾実祈部長は「しょうがないけど、悔しかった」と打ち明ける。

　昨年１２月、市民オーケストラ・延岡フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督であり、顧問として同学園吹奏楽部を支えた椛山達己さんが逝去した。尚学館中学校との定期演奏会で、タクトを振った約１カ月後だった。

　「言葉にできないほどつらいけど、自分たちにできることをやろう。延学サウンドを絶やさずに奏でよう」。山脇顧問は、そう部員に伝えた。中止の知らせが届いたのは、前向きに練習に取り組んでいた頃だった。

　九州大会の舞台に立てなくなり、園田顧問も落ち込んだ。「椛山先生には中学時代からお世話になった。立派な演奏をして、先生を追悼したいという思いを大会に込めていたので」と残念がる。

　合同チームには「コロナの影響を受け続けている社会を盛り上げたい」という気持ちもあった。だからこそ、本番で披露する曲の一つに「日本を勇気づける名曲メドレー」を選んだ。

　失意に沈んだ時期はあったが、今はそれぞれが気持ちを切り替えている。延岡学園は７月の県吹奏楽コンクールなど、日向は３月２１日の定期演奏会に向け、コロナ禍による制限を受けながらも練習に励む。

　延岡学園の吉岡部長は「コロナで満足にはできないが、一人ひとりがコンクールの曲を研究しているし、工夫しながら練習している。そうやって今後も、延岡学園の音楽を届けるために精進していきたい」と気持ちを新たにしている。

　九州大会に参加予定だった日向３年の黒木美衣さんと江尻茉由さんは、定期演奏会で引退だ。２人は「中止にならないように」と祈りつつ「支えてくれた人に演奏で恩返ししたいし、悔いを残さないよう練習したい」と意気込んでいた。