勝利お預けも感謝－甲子園の富島応援団

本紙掲載日：2022-08-12

3面

全国各地から駆け付け声援

◆最後は選手にねぎらいの拍手

　「甲子園で１勝」を目指して戦った富島。試合が進むごとに結束力を強めた応援団は最後の最後まで逆転を信じ、メガホンを力強くたたき続けた。目標達成は次にお預けとなったが、試合後は甲子園に連れてきてくれた野球部に感謝とねぎらいの拍手を送った。

　三塁側アルプススタンドは生徒、教職員約２２０人、保護者や野球部ＯＢ、全国各地から駆け付けた同窓会「富友会」（三輪正明会長）のメンバー、近畿県人会、近畿日向会に加え、約４００人の一般客と合わせ計６００人以上が陣取った。

　チアリーダーはダンス部（細矢こころ部長、２３人）に助っ人の３年生１３人が加わり、スタンドに華やかさを加えた。細矢部長は「練習してきたことを発揮し、野球部みんなに気持ちが伝わるよう頑張る」と、元気いっぱいに試合開始を待った。

　富友会や県人会のメンバーらは、２時間以上も前から続々と集まった。東京同窓会の江藤幸作会長（７４）は、「後輩たちが甲子園に連れてきてくれて本当にうれしい」と感慨深げ。榎園美智子さん（７５）＝日向市＝は「自分の母校が出られるなんて言葉にできないほどうれしい」。卒業生らは「今回は勝って校歌を歌いたい」と期待した。

　試合は六回まですべて走者を出すものの１点が遠い。走者が出るたび、アウトを取るたび、オレンジ色のメガホンが揺れ、ピンチの場面では祈った。

　八回を終えて０―４。最前列を陣取ったＯＢは「あと４点入るから！」と言い聞かせ、応援に一層熱が入る。山﨑舜太さん（２０）＝都城市＝は「最終回で逆転して甲子園１勝を達成して」と、一緒に汗を流した後輩たちを最後まで信じた。

　５点目を入れられ、迎えた九回裏。どこからともなく手拍子が湧き起こった。すぐに広がり、アルプス席以外の観客も巻き込み一体感が増していった。選手も応援団もブレることなく「甲子園で１勝」に、最後の最後まで挑んだ。

◆「お疲れさま、かっこよかった」

　３年生マネジャーの杉田灯さんは「一番長い夏が今終わったんだ」と試合終了後、涙が止まらなかった。選手と一緒に現地入り。記録員として入った山﨑美和さんと共に、練習を支えた。「足りない部分もあったけど、頼ってくれてありがとう、お疲れさまと伝えたい。かっこよかった」と声を絞り出した。

　迫力ある演奏を見せたブラスバンドは、大阪府の精華高校の部員、ＯＢ・ＯＧ３０人以上が友情演奏。２時間弱の練習だったが、レギュラーメンバーが希望した曲を球場いっぱいに響かせた。

　山之口美玖顧問（３２）は「一番の応援だった。心を動かされた」と一般客から声を掛けられたといい、「結果は残念で悔しいが、成長できた夏だった。別の宝物ができた」。精華高校３年の北野愛翔さんは「自分の学校ではないが負けた悔しさも感じ、貴重な経験になった。演奏できて良かった」と話した。

　小川晴彦校長は「野球部も応援団も士気が上がった。恥じることなく帰って」とねぎらった。