新型コロナ週刊トピック－全国一斉に全数把握へ

本紙掲載日：2022-10-01

3面

「全数把握」見直しの概要（佐藤圭創医師作成）

届け出－リスク高い人に限定

　新型コロナウイルスの感染状況が全国的に落ち着く中、すべての感染者の発生届提出を医師に義務付ける「全数把握」が全国一斉に見直されました。ただ、届け出の対象外となった年代の人からは、感染が疑われる場合にどう対応すればいいのか分からないと困惑の声も聞かれます。そこで今回は、全数把握見直しの話題を中心にお伝えします。

◆９月２６日、実効再生産数全国最多に－連休の影響今後も増減

　全国では感染者数の減少傾向が続いており、今後の動向予測に用いられる実効再生産数（１人から何人に感染しているかの指標）も、９月２７日時点で０・９０と増減目安の「１」を下回っています。

　一方、延岡市は同２０日現在で０・６５だった実効再生産数が、同２６日には１・０９に急増しました。このため、直近１週間の人口１０万人当たりの感染者数は、同日時点で宮崎県が再び全国最多となりました。

　その要因について、県新型コロナ対策調整本部の佐藤圭創特任医師は連休（同１７～１９日と２３～２５日）の影響とみており、「一時的な増加で、今後も連休や大人数の行事などを通して増減が繰り返される可能性はありますが、深刻に受け止める必要はないと考えます」と話しています。

◇患者の届け出対象は重症化リスク高い人

　感染者の届け出対象を重症化リスクの高い人に限定する全数把握が、２６日付で全国一斉に見直されました。保健所や医療機関の人手が限られる中、特にケアが必要な患者に医療サービスが行き渡るようにするのが狙いです。

　主な届け出対象は―①６５歳以上②入院の必要・リスクがある人③重症化リスクがあり新型コロナ治療薬や酸素の投与などが必要な人④妊婦―の４類型です。感染状況を把握するため、陽性者数の集計は続けられます。

　重症化リスクが高い基礎疾患には―、悪性腫瘍（がん）▽慢性呼吸器疾患（ＣＯＰＤなど）▽慢性腎臓病▽心血管疾患▽脳血管疾患▽高血圧▽糖尿病▽脂質異常症▽肥満（ＢＭＩ３０以上）▽臓器移植▽免疫抑制剤や抗がん剤などの使用▽その他の事由による免疫機能の低下―が挙げられます。

◇陽性疑いあればこれまで通り医療機関へ

　全数把握の見直しで、若者を中心に多くの人が発生届の対象外となりましたが、陽性になった場合は従来通り、自宅療養など外部との隔離が求められます。

　ここで混乱が生じているのが、感染が疑われる場合の対応です。体調が悪化して、感染したかもしれないと不安になったのに「自分は対象外だから」と相談先に迷い、救急車を要請してしまった事例が県北でも起きているといいます。

　こうした状況を踏まえ、延岡市医師会などは「感染が不安な場合は、発熱を含め、これまで通り医療機関を受診してください」と呼び掛けています。陰性か陽性かを調べるには検査キットもありますが、広く医療機関で診断しています。

　県は感染状況把握のため、自己検査で陽性だった場合は県陽性者登録センターへの登録（インターネットの専用フォーム）を求めています。

◇インフルの流行も心配、より自己管理を

　この先、心配なのが次なる流行ですが、専門家らは「感染リスクが高い患者の治療に集中できる態勢を確保していくことが重要」だと、全数把握見直しの意義に理解を求めています。

　この夏、爆発的に感染が拡大したオミクロン株のＢＡ・５は、感染者の９５～９７％が軽症・無症状の自宅療養者だったといいますが、陽性者全員の細かな情報を把握しなければならなかったため、医療機関や保健所に多大な負担がかかりました。

　その結果、真に医療が必要な重症患者らへの対応が追い付かず、医療崩壊を招いてしまった事例もあります。ただ、全数把握の見直しに伴い、自宅療養中に症状が急変した陽性者への対応が遅れてしまうなどの懸念も指摘されています。

　これからインフルエンザの流行も心配される中、より個々人の健康管理が大切になります。発熱や喉の痛みなどで感染が不安な場合は医療機関を受診し、もし陽性と判明後に体調が悪化した場合は県のフォローアップセンター（電話０１２０・８９・００９９）に連絡しましょう。

　一方、県は感染拡大防止のため、「陽性と判明したら軽症であっても外出を控え、自宅療養するようお願いします」と呼び掛けています。