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復旧作業、今も−台風14号被災から1カ月

本紙掲載日:2022-10-18
3面

まだまだ支援が必要−被害のひどかった延岡市北方町一帯

◆佐賀のボランティアが指摘−情報格差生まれ、不満も

 「最近、怒りっぽくなってしまった。いけないと反省しているが、感情がいろいろ動いてしまって」。延岡市北方町で床上浸水の被害に遭った50代の男性が今月上旬、胸中をボランティアに打ち明けた。甚大な被害をもたらした台風14号から1カ月。同町の曽木、川水流地区や周辺の地区では今も片付け作業が続く。心身共に疲弊した被災者からは、この状況に不満の声も聞こえてくる。

 「災害後の申請手続きや受けられる支援が周知されていない。情報を知っている人と知らない人とで格差が生まれ、不満が高まっている」と指摘するのは、被災直後から同町を中心に被災地を回り、不安や悩みに寄り添う活動を続けてきた佐賀県のボランティア団体。

 申請しないと利用できない支援がほとんどだが、情報がうまく伝わっていない現状があるとして「刷り物にして伝えるべき」と強調した。

 今月8日、市内のボランティア団体が開いた物資配布会に訪れた70代の女性は、「行政の支援が行き届いていない」と訴えた。地区の中心部から離れた集落で断水時などに支援がなかったという。「声を上げようと市に電話しても、担当が違うとたらい回しにされた。疲れた」と話し、配布された物資を手に「このような支援は初めて。本当に助かるしありがたい」と感謝した。

 日がたつにつれ、被災者は心身共に疲れがたまってきている。佐賀県のボランティア団体が過去3回、訪問したとき、冒頭の男性は、他の被災者への気遣いの言葉ばかりを口に出していた。ところが、4度目の訪問の際、同行取材をしていた記者を見て、初めて不満を打ち明けた。

 「相談しようにもたらい回しにされてつらかった」「片付け作業に追われる中で罹災(りさい)証明書の手続きに行くのは大変だった」「行政の対応にがっかりした」−、これまでの我慢を吐き出すかのように話し、時折、涙を見せた。ボランティアらはその様子に「我慢の限界が来ているからね」と思いやった。

 不満の矛先は行政などに向けられがちだ。しかし「市役所も社協も通常業務のための人数。人が足りないのは分かる」とボランティア団体の女性。実際に休みなしで業務に当たっている職員もおり、「行政も手が回らない部分は声を上げ、ボランティア団体などに頼るべきではないか」と指摘した。

◆ボランティア、県外からが地元を上回る

 延岡市内では「ボランティアが足りない」との声も聞かれた。同市では社会福祉協議会が直後に災害ボランティアセンターを設置し、延べ861人が活動したが、閉所以降は激減。特に10月に入ってからは県外からのボランティアが地元の数を上回るようになった。

 東京から訪れた女性は「こんなに少ないところはない。地元の人はどこに行ってしまったのかという感じ」と話した。

 地元のボランティアから「地元として情けない」との声が聞かれる一方で、「今も支援が必要な人がいるとは知らなかった」「どこに行けばいいのか」など、支援したい気持ちはあるが、支援の仕方が分からないといった声も聞かれた。

 被災者からは「どこにボランティアが必要だと伝えればいいのか分からない。近所にたくさん来ていたので『1時間だけでもうちにも来てほしい』と頼んだが来てもらえず、近所の人への不信感が高まった」という声もあり、窓口となる場所や組織の必要性に言及する意見もあった。


◆「人が少なく復旧難しい」−八峡や旧早日渡駅、城小周辺

 北方町内では、特に被災した世帯が多かった曽木地区や川水流地区の他に、八峡や旧早日渡駅周辺、閉校した城小学校周辺など、住民が少ない地域も、床上浸水などの大きな被害を受けた。

 桜の名所として知られる旧早日渡駅周辺では、住宅が2階にあり無事だった1世帯を除く全ての住民が、家族や親戚の元に避難したり、既に引っ越したりと寂しい光景が広がっていた。2週間以上が過ぎた6日午後には住民の男性が、「人がいないから片付けも1人」と、道路沿いの復旧作業に追われていた。

 城小学校は、敷地内のフェンスが折れ曲がり、遊具には洪水で流された草木が付着したまま。校舎のガラスは割れ、プールには川から運ばれた砂が堆積していた。近くの住宅は壁などが破損しており、既に引っ越した世帯もあった。

 被災した地域の川沿いの道路などには草木や土砂が積もったままの場所が多く、復旧はまだ進んでいない。「以前だったら地区の人が出て作業していたが、今は人が少なくそれも難しい。どうすればいいのか」。排水溝に泥がたまり、生活排水が流れにくい状態が続いている地区の人たちは、途方に暮れた様子だった。

 人口減少に加え、被災したことでいまだに自宅で生活できない住民、引っ越しせざるを得なかった住民もおり、人手不足はさらに深刻になっている。支援を必要としている地域はまだ多く残っている。

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